フレンチトースト訴訟

父ちゃん大法廷に立つ(計画)



提出した準備書面(3)

被告さんの反論が想定内だったので、ささっと準備書面書いて打ち返しました。

被告さんの反論に、私の予想していた大きな方針転換はなかったですが、明白性の基準を持ってきているのかなと思いました。様々な社会的要因を考慮する必要があるからという主張は、さすがに苦しいんじゃないでしょうかね。

 

 

第1 被告第2準備書面 第1について

 

 被告は答弁書にて引用した判示を再び引用し,「租税は,今日では,国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え,所得の再配分,資源の適正配分,景気の調整等の諸機能を有しており,国民の税負担を定めるについて,財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とする」とし,本件区別が,「様々な社会的要因を考慮する必要があるから,立法府裁量権を逸脱していない」と主張していると解される。しかし,被告は寡夫控除に所得要件を設けることに合理的な理由があることを示していないので,本件区別は合理性のない差別であり,立法府裁量権を逸脱しているといわざるをえない。

 ところで被告の引用した大法廷判例民集39巻2号247頁には,次の補足意見が記されている。

「法廷意見の説くように,租税法は,特に強い合憲性の推定を受け,基本的には,その定立について立法府の広範な裁量にゆだねられており,裁判所は,立法府の判断を尊重することになるのであるが,そこには例外的な場合のあることを看過してはならない。租税法の分野にあっても,例えば性別のような憲法一四条一項後段所定の事由に基づいて差別が行われるときには,合憲性の推定は排除され,裁判所は厳格な基準によってその差別が合理的であるかどうかを審査すべきであり,平等原則に反すると判断されることが少なくないと考えられる。性別のような事由による差別の禁止は,民主制の下での本質的な要求であり,租税法もまたそれを無視することを許されないのである。」(抜粋)

 本件区別は租税法上の性別による差別であり,厳格な基準によってその差別が合理的であるかどうかを審査すべきとされている。とすると,本件区別の理由が合憲であるには,やむにやまれぬ理由があり必要不可欠なものでなければならないが,被告の主張する「様々な社会的要因を考慮する必要がある」という理由は,なんら具体性のないもので審査に値しない。

 一例として「育児に当たっての祖父母等の援助の割合等」を示しているが,被告は,性別による差異の程度や所得要件との関連性をなんら示していない。一般的に,同居親族や別居親族・親戚,近所の友人や知人の援助の度合いは,個々の環境によって違うと考えられ,高所得ひとり親の性別によって大別されるものではない。

 また租税負担能力は,租税を負担しうる個人的な経験的な経済的能力なのであるから,親族等による育児の援助があることによって経済的能力が大きくなることはなく,育児の援助がないことで経済的能力が小さくなることもないことから,示された一例によって,寡夫控除の所得要件が必要不可欠であるということはできないし,本件区別を正当化する合理的な理由としても認めることはできない。

 


第2 被告第2準備書面 第2について

 

 養育費の受取額についての原告の主張は,被告が答弁書21頁で母子世帯と父子世帯では収入に有意の差があると主張したので,就労による収入が同じ父子世帯と母子世帯であれば,養育費の受取額に差がある分,合計収入額は母子世帯の方が多くなると反論したものである。

 

まとめ

 

 被告はこれまで本件区別の理由を就労形態の違いだと主張していたが,高所得女性ひとり親はパートやアルバイトではないことが明らかとなったため,就労形態の違いは性別によって高所得ひとり親の差別を正当化する合理的な理由には当たらない。

 今回,本件区別が「様々な社会的要因を考慮する必要があるので立法府の裁量の範疇である。」としているが,具体性に欠けており,寡夫控除の所得要件との関係性もまったく示されていないため,区別の必要性,重要性,正当性,合理性をいずれも認めることはできない。

 また一例として親族等による援助の割合等をあげているが,性別によって大別する根拠も,所得要件や租税負担能力への関係性も示していない。よってこれも,区別の必要性,重要性,正当性,合理性を認めることができない。

 そもそも租税法においても性別による差別の合憲性は,厳格な基準によって審査されなければならないが,被告の主張する区別の理由には,なんら合理性がなく,不合理な差別であることは明らかであり,合理性の基準に照らし合わせたとしても違憲と認められるのであるから,憲法14条1項に反しているのは明らかである。

 

以上