あるシングルファザーの裁判日誌

寡夫控除は不公平だとして行政訴訟を起こしたシングルファザーのブログ



控訴理由書(4)

高裁に提出した控訴理由書です。全部で6章あります。今回は4章をUPします。

 

第4 統計データから認められるその他の差異について

 

(1)平均収入額の観点では,700万円以上の収入のある母子世帯の母親は父子世帯の父親に比べて低いとはいえないことが統計データによって裏付けられた。それ以外にも,直近3回の就業構造基本調査の結果から認められる事実を列挙し,就業構造基本調査結果からは,700万円以上の収入のある父子世帯の父親と母子世帯の母親を比較し,相対的に母子世帯側の租税負担能力が低いとはいえないことを証明する。

(2)就業構造基本調査の平成19年分(甲15号,甲16号),平成24年分(甲17号,甲18号),平成29年分(甲20号,甲23号)の度数分布表から,子の平均人数を算出したのが次の表(甲25号)である。700万円未満のひとり親世帯では,母子世帯のほうがわずかに子の平均人数は多くなっているが,700万円以上のひとり親世帯では,調査年によって逆転することもあり,性別による傾向の違いはない。

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(3)就業構造基本調査の平成19年分(甲15号,甲16号),平成24年分(甲17号,甲18号),平成29年分(甲20号,甲23号)の度数分布表から,末子の平均年齢を算出したのが次の表(甲25号)である。700万円未満のひとり親世帯では,母子世帯のほうがわずかに末子の平均年齢は小さくなっているが,700万円以上のひとり親世帯では,調査年によって逆転することもあり,性別による傾向の違いはない。

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(4)就業構造基本調査の平成19年分(甲15号,甲16号),平成24年分(甲17号,甲18号),平成29年分(甲20号,甲23号)の度数分布表から,6歳未満の子がいる割合を算出したのが次の表(甲25号)である。700万円未満のひとり親世帯では,母子世帯のほうの割合が大きくなっているが,700万円以上のひとり親世帯では調査年によって逆転することもあり,性別による傾向の違いはない。よって養育の負荷が大きい低年齢の子を育てている割合という観点でみても,父子世帯と母子世帯で差異は認められない。

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(5)就業構造基本調査の平成19年分(甲15号,甲16号),平成24年分(甲17号,甲18号),平成29年分(甲21号,甲24号)の度数分布表から,ひとり親の無業者数と求職者数,ひとり親の就業率,そして,収入700万円以上で主な収入の種類別のひとり親世帯数を算出したのが,次の表(甲25号)である。700万円未満のひとり親世帯では,母子世帯のほうが就業率は低い傾向にあるが,700万円以上のひとり親世帯では調査年によっては同等の年もあり,性別による傾向の違いは認められない。平成29年調査では,収入700万円以上の母子世帯の就業率がやや低くなっているが,求職者はいない。これは,無業者であっても,家賃や土地代などが主な収入であったりするように,就業の必要がないという事情によるものであり,就業が不安定なのではなく,無業でも安定した収入源があるということである。収入700万円未満の母子世帯の場合は,正規の職員に就業するのが困難な状況にあるが,収入700万円以上の母子世帯の場合は事情が異なるので,平成29年調査の就業率の結果から租税負担能力が低いということはできず,むしろ就業せずとも高収入である世帯は,余剰の労働力があるのだから,租税負担能力が高いともいえる。なお,全体的に収入の種類についてみると,収入が700万円以上のひとり親世帯の約9割以上が賃金・給料となっており,特別な差異はみられない。

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(6)就業構造基本調査の平成19年分(甲15号,甲16号),平成24年分(甲17号,甲18号),平成29年分(甲19号,甲22号)の度数分布表から,ひとり親の平均年齢を算出したのが次の表(甲25号)である。若干ではあるが,母子世帯の母親のほうが父子世帯の父親にくらべて年齢が低い傾向が認められる。これは,一般的な夫婦の平均年齢差が1.5歳程度であることを反映したものであると考えられる。

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(7)収入700万円以上のひとり親世帯の平均収入額と父母の平均年齢が判明したので,ここで,賃金カーブモデルを使って過去と今後の収入の目安をシミュレーションする。一般的に,女性はパートやアルバイトの割合が多いため,緩やかな賃金カーブを描くが,収入が700万円以上の場合は,ほとんどが正規職員や従業員であるので,男性と同じように50歳前後がピークとなる高低差の大きい山型の賃金カーブを描くと考えられる。そこで,男性の賃金カーブモデルを使用し,それぞれの調査年ごとに,収入700万円以上のひとり親世帯の平均収入額と平均年齢から,どのような賃金カーブになるかをシミュレートしたのが次のグラフ(甲26号)である。

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(8)シミュレートされた賃金カーブは,どの調査年でも母子世帯の母親のほうの山が高くなっている。つまり平均収入額と平均年齢からは,収入が700万円以上の母子世帯の母親のほうが,過去から将来に渡って収入が多くなるとこが合理的に推認でき,相対的な租税負担能力は高いといえる。

(9)このように就業構造基本調査の統計データからは,収入700万円以上の母子世帯の母親の租税負担能力の低さは認められない。すなわち,所得が500万円を超える父子世帯の父親と母子世帯の母親を比較したときに,母子世帯の母親のほうが租税負担能力は低いということを示すデータはなく,むしろ,母子世帯の母親の租税負担能力のほうがやや高いことを示している。このほかにも,養育費の受取額では母子世帯のほうが高額になることが判明しており,所得500万円を超える母子世帯の母親は,収入や収入の安定性、就業の安定性が低いことはなく,相対的な租税負担能力は,父子世帯の父親よりも低いとはいえないのが明らかである。