あるシングルファザーの裁判日誌

寡夫控除は不公平だとして行政訴訟を起こしたシングルファザーのブログ



控訴理由書(6)

高裁に提出した控訴理由書です。全部で6章あります。今日は6章とまとめをUPします。

6章は言いたい放題です。ちょっとゴリ押し感があるのは否めません。でも、まぁ、言わせていただきます。

 

 

第6 本件区別の真の目的に正当性がないことについて

 

(1)所得500万円を超えるひとり親世帯の父母には租税負担能力の差異がなく,本件区別の立法目的が「男性と女性の間に存在する租税負担能力の違い等を考慮したもの」ではないことが明らかになったところで,父子世帯の父親のみに所得要件を設けた真の目的を,経緯を含めて,改めて整理する。

(2)まず,昭和56年の税制改正寡夫控除が創設される前は,父子世帯の父親には控除がなく,母子世帯の母親の租税負担を軽減する制度であった。その立法目的は,父子世帯の父親の場合は,寡婦(母子世帯の母親)とは異なり,通常は父子世帯となる前に既に職業を有しており,父子世帯となった後も引き続き事業を継続したり,勤務を継続したりするのが普通と認められ,また,高額の収入を得ている者も多い等,男性と女性の間に存在する租税負担能力の違いや生活関係の差異等を考慮したものであると解される。

(3)そして,昭和56年の税制改正で,寡婦控除に準じて寡夫控除を創設した立法目的は,男女平等の観点から母子世帯と同じように父子世帯の租税負担を軽減し,経済的に支援するためと解される。

(4)なお,寡夫控除を創設するときに,子以外の扶養親族がいる場合にも認められている寡婦控除を,寡夫控除には認めなかったことから,立法目的には,父子世帯の父親の支援以外に,ひとり親世帯の子どもの福祉という観点も,考慮がなされているものと解される。

(5)その上で,母子世帯の母親には所得制限を設けず,父子世帯の父親にだけ所得制限を設けた立法目的は,税制改正前の母子世帯全体の優遇状態を維持しつつ,一定の所得を超える父子世帯の父親を除外することで,寡夫控除創設による税収減の影響を小さくするためと解される。

(6)この結果,一定の所得を超える父子世帯の父親と母子世帯の母親には,租税負担能力の差異のような考慮すべき事情がないにもかかわらず,税負担が異なることになった。

(7)平成27年の国勢調査の結果によると,川崎市の父子世帯数は774世帯(甲27号)であるが,仮に,そのうちの約2割(2割の根拠は甲14号)である155世帯が,所得500万円を超え,寡夫控除の適用がないと想定した場合,所得要件による効果は1世帯あたり年間2万6000円の税収効果があるので,155世帯では年間約400万円の税収効果が見込まれることになる。その金額は,年間7000億円を越える川崎市の予算規模からみれば,大きな金額とは言い難く,所得要件の設置がやむにやまれぬ事情ということはできない。

(8)このように,地方公共団体の財政事情を考慮し税収減の影響を小さくするためであるとしても,この立法目的には,やむをえない事情も合理的な理由もない。性別の違いだけで負担する税額が違うことは,著しく不合理な差別であり,許されるものではない。

(9)ちなみに,寡夫控除創設時の第96回国会衆議院地方行政委員会の議事録(甲28号)に,この差別についての質疑が記録されている。佐藤敬治委員の「男が小さい子供を抱えたら,本当にこれは女よりも哀れなんですね。そこで,せっかく寡夫控除制度というものをつくったのだから,なぜ女と一緒にしないで女より一段劣ったところでやっているか,男女不平等じゃないかと思いますが,どうですか。」という質問に対し,関根税務局長は「確かに男でも,子供を抱えて一人になってしまったら大変な御苦労をいただかなければいかぬと思うわけでございますが,子供を持っている場合には,御婦人の場合と同じ扱いを私どもはしているつもりでございます。ただ,所得制限が三百万というのがございますけれども,それを除きますと,子供を持っておれば御婦人でも男性でも同じように寡婦(夫)控除の対象になる,こういうことでございます。」というように,所得制限によって父子世帯の父親を劣らせている理由は答弁しておらず,その後,「子供を持っている場合には,全く同じ扱いにしているつもりでございます。」と事実と異なる答弁をしている。

(10)租税法は,特に強い合憲性の推定を受け,基本的には,その定立について立法府の広範な裁量にゆだねられているとしても,上記答弁にみられるように,本件区別は,国会の議論を通してもなお,正当な理由のない性差別を含んだまま法が施行され,そして30年以上に渡り是正されることがなかった不当な差別である。当時の時代背景として,母子世帯は守るべきで父子世帯は耐えるべきというように,男性には忍耐を求める価値観が主流だった可能性はあるとしても,今日では,租税法以外で父子世帯を経済的に差別しているものはなく,子どもの福祉という観点から見ても母子世帯と父子世帯は同じ扱いにするべきというのが社会通念となっている。そしてそれは正しく憲法14条1項後段に列挙された性別による差別を禁じた平等原則に基づくものである。

(11)更には,寡夫控除の立法目的には子どもの福祉の観点があると解されるように,ひとり親世帯の経済事情は,子どもの福祉に直結する。子どもの観点でも,親の性別によってひとり親世帯の税負担が異なるということは,子どもにも不利益を強いることになっている。加えて,寡夫控除の所得要件による適用除外は,直接的な租税負担以外にも,父子世帯の子どもに影響を与えることがある。例えば,高等学校等就学支援金の支給には,寡婦寡夫)控除適用後の市県民税の所得割額を基準にして所得制限が設けられている。そのため収入によって,母子世帯では支給されても,同じ収入の父子世帯では,寡夫控除が適用されないために年間11万8800円の就学支援金が支給されないケースがある。ひとり親世帯の子どもにとっては,親の性別というどうにもならない事情によって差別され不利益を受けることは,許されることではない。

(12)このように,税収減の抑止という真の目的によって,所得の多い父子世帯の父親と,その子どもに負担を強いる本件区別は,やむをえない事情が存在しないどころか,租税負担能力の違い等の合理的な理由さえ存在せず,著しく不合理で正当性がなく,憲法14条1項に違反することは明らかである。

 

まとめ

 

以上,争点のひとつであった違憲審査基準の採用理由が不備であること,ひとり親世帯の平均収入額についての審理が尽くされていないこと,ひとり親世帯の平均収入額の差異が事実誤認であること,その他に統計上で所得500万円を超える母子世帯の母親の租税負担能力が低いことを示す事実が存在しないこと,そして原審に記された本件区別の目的と手段に関連性がないこと,更に本件区別の真の目的には正当性がないこと,以上のことから原判決は取り消されるべきであり,憲法14条に反した課税処分は取り消されるべきである。

以上

 

明日は、証拠説明書をアップします。

その後、子供たちの作成した甲25号証と甲26号証をアップします。