フレンチトースト訴訟

父ちゃん大法廷に立つ(計画)



寡婦控除は、戦争未亡人控除なのか?(下)

昨日のブログ記事にあげたように、寡婦控除は創設当初から死別だけでなく離別した女性も救済する制度でした。条文からは戦争未亡人のための制度ではないことが明白です。

 

この寡婦控除が戦争未亡人のための制度だと言っている論文や、弁護士の主張や、ブログネタ、新聞記事、それらの根拠を突き詰めていくと、昭和47年の国会の議事録になります。疑う方は、ご自身で検索して閲覧してみてください。一応、このブログ記事の後方にコピペしておきますので、よかったらご覧ください。

 

昭和26年の創設された寡婦控除の立法目的が、なんで昭和47年の議事録なのでしょう。これは議事録全文を読んでみると事情がわかってきます。

 

よく引用される寡婦控除の立法目的はこちらです。

寡婦控除の制度は戦後昭和二十五、六年にスタートした制度でございますが、その当時戦争によって夫を失ったいわゆる戦争未亡人が、家に残された老人なり子供たちなりをかかえながら一家の大黒柱として所得を稼得をしていくという場合には、通常の場合に比べましてそれなりにいろいろと追加的費用を要するであろうという費用の点に着目をして設けられたという経緯でございます。

これは大蔵省の主税局長の言葉です。はっきり言い切っていますが、この説明は、この後の説明をしたいがための前提でした。

この時、寡婦控除の拡充で、夫と死別した女性は扶養家族がいなくても寡婦控除が受けられるように制度を変えようとしていました。しかしそこには色々と無理があるのです。生別と死別で区別することや、独身の女性と、扶養親族のいない死別の女性と区別すること、これらの区別の正当性を訴えるのはとても難しいことで、国会答弁でも相当にやり込められています。その正当性を主張する説明が、そもそも寡婦控除は戦争未亡人のための制度であったのだけど、そろそろこどもたちが成人する頃になり、そうなると寡婦控除も扶養控除も同時にはずれて、ショックが大きいんだよということなんです。(その理屈ってどうなの?って気もしますが)

 

でも、昭和47年となると時期が矛盾し、寡婦控除の適用を受けている女性の多くが夫を戦後に結核など亡くしていることなど、指摘により答弁に窮した主税局長は、最終的には戦争未亡人を前提としていたという説明をおわびして訂正しています

 

つまり、新しい寡婦控除の制度(扶養親族がいなくても死別なら寡婦として認める)の法案を通す時に、つじつまを合わせる為に、寡婦控除の創設目的が戦争未亡人の救済だったという事にしたんだと私は考えます。(異論は認めます。)

 

でも、まぁ、この法改正は成立するんですけど、その後、寡婦控除の創設目的として、戦争未亡人救済という言葉だけが一人歩きをするようになったということになったんでしょうね。

 

議事録は、なかなか、面白かったですよ。子供のころに聞いた”オールドミス”なんて単語も出てきます。今は死語になってますね。ってか今そんな言葉を言ったら、こちらが社会的に抹殺されるかもしれません。

 

以下は議事録です。(長いです)

*********************

 

第068回国会 大蔵委員会 第25号
昭和四十七年五月十日(水曜日)
    午前十時四十六分開議
 出席委員
   委員長 齋藤 邦吉君
   理事 宇野 宗佑君 理事 丹羽 久章君
   理事 藤井 勝志君 理事 山下 元利君
   理事 広瀬 秀吉君
      奥田 敬和君    木村武千代君
      倉成  正君    地崎宇三郎君
      中川 一郎君    中島源太郎君
      坊  秀男君    松本 十郎君
      村田敬次郎君    毛利 松平君
      吉田 重延君    吉田  実君
      阿部 助哉君    佐藤 観樹君
      藤田 高敏君    堀  昌雄君
      山中 吾郎君    貝沼 次郎君
      二見 伸明君    寒川 喜一君
      小林 政子君
 出席国務大臣
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
 出席政府委員
        大蔵政務次官  田中 六助君
        大蔵省主計局次
        長       長岡  實君
        大蔵省主税局長 高木 文雄君
        大蔵省銀行局長 近藤 道生君
        大蔵省国際金融
        局長      稲村 光一君
        厚生省児童家庭
        局長      松下 廉蔵君
 委員外の出席者
        大蔵省理財局次
        長       大蔵 公雄君
        国税庁直税部長 江口 健司君
        国税庁間税部長 守屋九二夫君
        大蔵委員会調査
        室長      末松 経正君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十日
 辞任         補欠選任
  渡部 通子君     二見 伸明君
同日
 辞任         補欠選任
  二見 伸明君     渡部 通子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会申し入れに関する件
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 二号)
 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 三号)
 相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 四号)
     ――――◇―――――
○齋藤委員長 これより会議を開きます。
 この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。
 目下社会労働委員会において審査中の健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会に連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○齋藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上、公報をもってお知らせいたします。
     ――――◇―――――
○齋藤委員長 所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。堀昌雄君。
○堀委員 本日は、午前中大臣の御出席がありませんので、私は、法律関係の案件だけにつきましてと、それから石油ガス税だけきょうは質問させていただいて、残余の問題につきましては大臣の出席を得て質問をさせていただきます。
 最初に、今回提案になっております所得税法第二条三十一号の問題であります。今回の三十一号の改正は、これまでの法律にかえて「寡婦 次に掲げる者で老年者に該当しないものをいう。イ夫と死別し、若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち、扶養親族その他その者と生計を一にする親族で政令で定めるものを有するもの」ロとして「イに掲げる者のほか、夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち、合計所得金額が百五十万円以下であるもの」こういうふうな部分の改正であります。
 そこでちょっとお伺いをいたしたいのですが、寡婦に対してこの控除をやるという基本的な考え方は何に基づいておるのか、最初にお伺いをいたします。
○高木(文)政府委員 寡婦控除の制度は戦後昭和二十五、六年にスタートした制度でございますが、その当時戦争によって夫を失ったいわゆる戦争未亡人が、家に残された老人なり子供たちなりをかかえながら一家の大黒柱として所得を稼得をしていくという場合には、通常の場合に比べましてそれなりにいろいろと追加的費用を要するであろうという費用の点に着目をして設けられたという経緯でございます。その後二十年たちまして、したがって現在ではいわゆる戦争未亡人という方の数がだいぶ減ってまいったわけでございますが、最近に至りまして、また交通事故等によって突然夫を失う、そして子供をかかえていかなければならないというような家庭が増加するというようなことで、新たな問題が生じているわけでございます。今回の改正につきましては、従来の考え方ではその費用という点に着目しておった関係がありましたことから、この寡婦控除の適用の条件としてあくまで扶養親族があるという場合だけを前提にしておったわけでございますが、そうしますとその扶養家族が幸いにして一人前になって巣立っていくというときには、扶養控除が適用にならなくなると同時に、その瞬間にまた寡婦控除も適用にならなくなるという事例が非常に多くなってまいりました。そうかといって、母親としては直ちにそれでは子供の世話になって生活するというか、子供に対して支出してきた経費を子供からまた取り戻すというわけにもなかなかいかないということで、そのショックが非常に大きいということから、子供があるなしということを条件にすることについて、ここ数年来非常に問題があったわけでございます。
 しかし、私どもは、ここ数年来そういう御要請が強かったのでありますけれども、それについて実はかなりかたくなに従来の考え方を守ってきたわけでございますが、それはただいま御説明いたしましたように、従来の考え方が追加的費用を要するという考え方に基づいていたからでございます。今回、だんだん一般的に福祉優先といいますか、そういう見地、世の中のものの考え方も変わってくるということも考えに入れまして、必ずしも扶養家族があるなしということを考えないで、そういうおよそ未亡人ということであれば費用もかかりましょうし、それ以外にいろいろと扶養親族のあるなしにかかわらず、負担もあるということもありますが、さらにそういう家計についての配慮という、いわば若干社会福祉的な考慮も入れての制度に切りかえていったらどうかという考え方になってきたわけでございます。
○堀委員 これは開会をしてもらったのですが、政務次官が出席してないのはどういうわけですか。
○齋藤委員長 来ておったのですが、ちょっと行ったので、いますぐ呼びます。
○堀委員 基本的な話をしているので、では来るまでちょっと待ちます。――政務次官、実はいま御不在中でしたが、今度の所得税法改正の第二条の三十一号の寡婦控除の問題についていま論議をしているわけです。そこで、いま主税局長の答弁によりますと、従前のこの寡婦控除というのは、夫をなくしたことによって扶養親族がある、それに対する追加的費用に着目をして控除を考えてきた、しかし、最近の諸情勢から家計についての配慮も必要であるし、社会福祉的な考慮をすることによって今回の改正を行なうことにした、こういうふうな答弁がいまあったわけであります。
 そこで、今度の法律改正がこれまでとちょっと違うところが一点あるわけです。それは三十一号のイのほうは「夫と死別し、若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者」とここに寡婦の定義を三つあげておるわけです。ところが口のはうでは「イに掲げる者のほか、夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち、合計所得金額が百五十万円以下であるもの」この「政令で定める」というところがちょっと私もはっきりしないので聞きますが、要するに今度はここで夫と離婚後婚姻してない者というのは排除されておる。寡婦というものの概念なんですけれども、最近のいろいろな社会情勢の変革というものの土台の上に、さらに家計についての配慮とか社会福祉的考慮というものを頭に置いての処理だろうと思うのですね。――何か私のいま言っていることにあれがありますか。今度のは、いまの前段は三つだのに後段は二つにしぼって、離婚をして後婚姻をしてない寡婦を排除しておるでしょう、ロのほうは。ちょっとそこから尋ねていきましょう。
○高木(文)政府委員 イのほうはいわゆる生別、死別というのを結局全部含めております。ロのはうは死別だけということで、生別というのは入っていない。そこにイとロの区別があるということであります。
○堀委員 私がいま言っておるとおりなんです。そこで、後段のほうであなたは家計についての配慮とか社会福祉的な考慮、こう言われたのですけれども、今日的状況で見ますと、婚姻が相当長期にわたっている人の離婚というのが最近非常にふえておるわけです。婚姻期間十五年、二十年にわたって結婚しておったけれども、その後夫が社会的あるいは経済的地位ができたためにいろいろ問題が起きて離婚したという人が実際にはたくさんあるわけです。新しい社会的風潮としてそういう情勢が非常にふえてきておる。そういう場合に、それでは夫が子供を引き取っておるかというと必ずしもそうではなくて、妻のほうが引き取っておる例もかなり多いし、同時にそういうことで残された妻と死別して残された妻とが法律上、税制上差別をされなければならない積極的理由があるとすれば、それを答えてもらいたい。
○高木(文)政府委員 今回の改正のときに一番問題になった点の一つでございます。従来は、要するに子供をかかえておって経費が非常にかかるということで、かなり明確であったわけでございますが、今度は子供があるなしということを必ずしも条件にしてないというところで、子供がなくても未亡人であればということにしますと、ただいま御指摘のように生別の場合と死別の場合とにおいて区別をする必要があるかどうかという問題が一つと、それから、実はこれは寡婦という概念からは全く離れてまいりますのですが、社会的に非常に問題がありますのは、全然結婚の経験がない婦人という、つまり何といいますか、オールドミスということばがよくありますが、結婚の機会のなかった婦人で、それでかなりの年齢に達しておる、しかし社会的には高齢に達してさびしい思いで暮らしておるという人がいる。そういう各種の環境のいわば孤独の御婦人というのを並べた場合に、どこにどういうふうに差を求めるか、同一視すべきかという点が非常に問題になったわけでございます。ある意味では、扶養親族があるなしというところが一つの基本的な非常に大きな段差のあるところであるけれども、そこをひとつ離れますと、いままさに御指摘のように生別か死別かということでそれほど差があるだろうかという問題があり、さらに言ってみれば戦争というようなことがあって、非常に多人数の結婚の経験のないかなりの年輩の方がどんどんふえておるという現状からいたしまして、そこにも一つ問題がありはしないか。そういう方が中年になり、老年期を控えて、所得者はかなり大ぜいおるものですから、そこにかつて結婚をし、そしてしかも死別をしたというところで線を引くことがどうかというあたりについては確かに議論がございまして、率直に申し上げて私どももたいへん悩んだわけでございます。
 そこで、まあ結論としてここのところで線を引くといいますか、死別ということに限定をいたしましたのは、従来の寡婦の概念が、扶養親族をかかえて非常に生活に困っておるというところからスタートをして、しかしさりながらそれが子供が育って、そして先ほども説明申し上げましたように、一挙に扶養家族でなくなると同時に寡婦控除が飛ぶということによるショックという問題が当面非常に問題であったという、問題の提起がそこから起こってまいりましたこととの関係上、とりあえずはその子供さんが成長したということから直ちに寡婦控除を飛ばすというのはどうかというあたりに現実的な解決を求めてはどうかということでありまして、ただいまの御指摘の点を基本的にいろいろ議論してまいりますと、確かに問題があろうかと思っております。
○堀委員 これは一つの寡婦控除というものの思想ですが、ものの考え方は、いまあなたが後段でおっしゃったように、要するに三つの項目を掲げて、生別であろうと死別であろうと生死不明であろうと、扶養家族のある寡婦について配慮をしてきたというのがこれまでの沿革ですね。ですから、その限りにおいては、扶養家族のある寡婦には生別、死別を前段で区別しなかったのですね。はっきりしているわけですよ。そうすると今度の問題は、いまあなたが後段で触れられたように、自分たちが生別、死別にかかわらず扶養家族があって扶養控除があったものが、みんな一人前になったとたんに、あなたが言われるように寡婦控除も扶養控除もなくなって条件が変わるというのは、生別と死別に区別ないじゃないですか。
 私は、大蔵省というのは筋を通してものを考える、特に税制こそ筋をたてまえにしなければならぬと思っているのですよ。そうしたら、そういうものの考え方の経緯の中から出てきた新しい立法で、ここで生別を排除するというのは、これは筋にならぬじゃないですか。これはおかしいですよ、どう考えてみても。だから、これはあなた方の発想の土台を、経緯をずっと追っていくならば、当然この中に一項、イと同じ条件を挿入するのでなければ、思想的混乱ですよ。税の上でこのような不公平な取り扱いをすることは、私は納得できないですよ、どう考えてみても。あなたのいまの答弁で、オールドミスなんというものはこの問題と全然関係がないのですよ。初めから寡婦でも何でもないんだから……。
○高木(文)政府委員 イで確かにおっしゃるように生別と死別とに関係なく、扶養家族を持っておられて働いておられる寡婦の方が従来から寡婦控除の対象になっていたことは御指摘のとおりであります。それから、私の説明が不十分でございましたが、その扶養親族が一人前になった場合に、生別であろうと死別であろうと扶養控除と寡婦控除が一挙に飛ぶということもまさに御指摘のとおりで、その点は私の説明が若干不十分でございました。
 ただその場合に、一挙に寡婦控除と扶養控除とが飛ぶということについて、それが非常に気の毒ではないか、長年の間御苦労になってやってこられた、それが御子息が成長したそのときに、現在の制度でいいますと十四万円の扶養控除のほかにさらに寡婦控除が飛ぶとかなり所得計算上影響が出ますので、それは気の毒じゃないかという一種の同情論といいますか、気の毒だという議論が起こってきたわけですが、その議論の過程におきまして、やはり長年の間戦争等によって非常に不幸な目にあって子供さんを育ててこられた未亡人の立場というものがきわめて強く強調されたわけでございます。いまちょうどそのくらいの階層の方が多いものですから、そこでそういうことになったわけでありまして、あるいは論理的には御指摘のように、生別死別を問わずお子さんがあればイのほうで入っておったわけですから、そういう意味からいって、ロについて生別死別と区別する。そこにあるいは問題があるかもしれません。問題があるかもしれませんが、そのようにいろいろ議論の過程において現在御提案申し上げておりますような形に落ちつきました経緯といたしましては、やはり何といいましてもいままでのイの対象の中心でありました戦争未亡人というものを頭に置いての議論であった関係でございます。
○堀委員 あなた、お子さんが何歳か知りませんけれども、あなたはいま戦争による未亡人で子供のあった未亡人、戦争で戦死をした人というのは、昭和二十年八月十五日までに戦死した人でなければ戦争未亡人じゃないのですね。よろしゅうございますか。いま現在、昭和二十年八月十五日に生まれた子供は何歳になっておると思われますか。いまちょうどその時期だと言われるけれども、私はいまはそんな時期じゃないと思うのですよ。その時期はもっと前にあったはずです。最後に生まれた子供が二十年八月十五日だ。それが扶養控除の適用がはずれる時期というのは一体いつですか。
○高木(文)政府委員 厚生省の調査によります「中高年齢層の婦人の実態」という調べがございますが、その中で全国で……。
○堀委員 けっこうです。もうちょっと私から申し上げます。そんな間接統計なんかでものにならないですよ。
 具体的に言いますと、私の長女は昭和二十三年の九月に生まれているんです。それがすでに昨年の三月に大学を卒業しておるわけです。大学を卒業したらもう扶養家族にならないんですね。昭和二十三年の九月に生まれた子供が昨年の三月にすでに扶養控除になっていない。昭和二十年を見ればこの間三年あるわけですから、昭和四十三年の三月には、男の子であれ女の子であれ、大学まで行ったとしても、昭和四十三年までにすでに戦争未亡人とあなたが言われる大宗をなしておるものは、実はもうこの関係にないのですよ。いま昭和四十七年ですから、昭和四十三年以降そういうものがあるはずがないのに、四年たった今日、その大宗をなしておるものが戦争未亡人だ、それによってこれがこういうふうになったなんて、全然あなた論拠にならぬじゃないですか。いまの厚生省の統計なんてそのこと事態参考にならぬですよ。
○高木(文)政府委員 私が申し上げたいのは、実は戦争未亡人と申し上げたのは非常にまた表現が悪かったのでございますが、寡婦控除の適用対象者の、どういうわけで寡婦になられたかという理由については税のほうではそれは調べておりませんのでわかりませんのですが、推定されますところでは、戦後の病死者が非常に多いようでございます。現在寡婦控除の対象になっておられる方々の寡婦になった理由としては、戦争によって直接そこで戦死をされた方よりは、戦後、たとえばあのころ結核が非常に流行したとか、そういうことも含めて、戦病死というよりはいわゆる病死により寡婦になられた者の数が非常に多いようでございまして、そのような事情も最近において、現行制度のままでありますというと、急激に寡婦控除の適用者が減ることになるということのようでございます。その点おわびをして先ほどの説明を訂正いたします。
○堀委員 主税局長、法案を出しているから、何とかつじつまを合わせるために答弁しておられると思うので、お気の毒なんですけれでも、ここで私、質問をやめます。これはもう私の申し上げておることが筋道だと私は思う。法律というものは過去を向いて法律をきめるんじゃないですよ。これから将来に向かって社会的変革に対応できるように法律をきめるんじゃないですか。過去にあったこと、何年に肺結核が多かったから、それは戦後に食糧事情も悪かったので肺結核が多かったことは当然だと思います。死別者が多かったことはお気の毒なことは私もよくわかりますよ。だから私は、死別者をどうしろと言っているんじゃないのです。寡婦としておられて、扶養家族がある人の立場というのは死別であれ生別であれ、さっきあなたが前段で触れられたように追加的費用に着目をしたという以上は、私はこれは同一のレベルで見たと思うからそういう法律構成になっていると思うのです。しかし、イの場合は、その追加的費用は今度は家計による配慮とか社会福祉的な考慮を入れて、寡婦控除と扶養控除が一ぺんになくなることが適当でないから、新たな制度を設けたというのなら、論理的にどう考えても、ここで生別したものを排除する理由はない。実はどう考えてもないのですよ。ないから、これはあとでひとつ与党の皆さんと御相談をいたしますけれども、どうしてもこれは口の中にイと同じような措置を加えるのでなければ、私どもを納得をさせるような説明はできないと思います。政務次官、この問題についていかがでしょうか。私は、私の申し上げておることが決して無理なことを言っていると思わない、いまの主税局が考えた発想をそのまま追っていけば、私の申し上げておるようなことにならざるを得ない、こう思うのでありますが、ひとつ政務次官の御見解を承りたいと思います。
○田中(六)政府委員 論理的には確かに堀委員の言う面もあると思います。
○高木(文)政府委員 多少補足して申し上げさしていただきます。
 私どもも死別と生別とを区別するのは非常にむずかしいのではないかという議論をいたしたわけであります。率直に申しまして、私どもは現在こういう法律制度として案を決定して御討議願っておるわけでありますが、審議の過程のことを申し上げておるわけでありますけれども、その過程の段階では、死別と生別を区別することは非常にむずかしいのではないかという議論はいろいろいたしました。そのときにあった議論といたしましては、死別をして、その場合には大体奥さんがとつぎ先のほうで、とつぎ先の家の人として子供を育て、とつぎの先の親ごさんたちのめんどうを見、そうしてまたとつぎ先のほうの家を守っていくという環境に置かれているのが大部分だ。これは最近の社会情勢等からいいますと、必ずしもそうでない場合もあろうかと思いますけれども、しかし都会と農村でもまた事情が違うだろうと思いますけれども、確かに死別の場合と協議離婚等、生別の場合とではだいぶ事情が違って、死別の場合には婚家にそのまま残って、そのまま、いわば古いことばになるかもしれませんが、家を守るといいますか、先方のとつぎ先の家を守って、遺牌を守って、子供を守ってと、こういう環境にある。それと生別の場合には、いろいろな事情で生別ということが起こりましょうから、その生別になった場合に、その御婦人がその後どういう環境であるかはいろいろありましょうけれども、死別の場合と生別の場合との婦人のポジションというものは、かなり違うのではないかということがいろいろ言われたわけでございます。そこをどう考えるかが一つの問題でありまして、私も死別と生別には若干のニュアンスの相違があるかなということを考えたわけでございます。
  〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
○堀委員 いま言われたことは、新憲法下の発想としてたいへん問題があると私は思うのです。いまのあなたの発想は、いまの新憲法下で家を守るとか、そんなことがあなた通用するんですか。これは重大な発言ですよ、高木さん。それは、いまの部分については取り消してもらったほうがいいですね。ほんとうにこれはたいへんなことですよ。
 それから、あなたは老人のめんどうを見ると言われましたね。婚家におって老人のめんどうを見る。老人は今度あなた方は新たに老人扶養というものをつくって、老人というものにはフェーバーを与えることにしておるじゃありませんか。老人を見ておったら扶養家族は残っておるはずじゃありませんか。あなたの言っている前段の場合は、子供たちを扶養したとか、これが成人になって扶養控除がなくなる。その場合に寡婦控除がなくなるという話をあなたは前段でしているじゃありませんか。それが基本なんでしょう。いまの話はこじつけですよ、家を守るとか、老人をめんどう見るなんということは。老人をめんどう見ておれば扶養控除が残っておるはずですから、寡婦控除も扶養控除も残るはずですよ。口の場合に該当しないはずですよ。だから、この問題はあなたが答弁されればされるほどおかしいことになるわけで、そんなことが議論の対象になったんでは、私は主税局の税制に対する議論の中身について信頼が持てないのですね。もう少し大蔵省は大蔵省らしく、主税局は主税局らしくやってもらいたいのです、これは非常に重大な問題ですから。戦後の新憲法の考え方は、結婚というのは家を継いだり守ることになっていないんじゃないですか。どうですか、ひとつ明快に答弁してください。
○高木(文)政府委員 家というのは、いま申し上げたのは民法の上における家という概念ではなくして事実上の家という意味でございます。もちろん旧憲法下におきます家という概念で申し上げているのではなくて、実際問題としてうちといったらいいのかもしれませんが、どちらのうちにいるかということでございます。その場合に問題は、生別と死別によりまして、一ぺんとつがれて別れた婦人の地位というものが全く同一だというふうに考えるべきなのか、あるいはやはり死別の場合には社会環境として非常に違った環境に置かれているというふうに考えるべきなのかという問題としていろいろ御意見がありますけれども、私どもは違った環境に置かれている場合が多いと判断したわけであります。
○堀委員 それなら前段のほうがおかしいんじゃないですか。いまあなたが言われたような論理構成ならイのほうで三つ並べていることがおかしいんじゃないですか、そう言われると。生別と死別を区別するのがたてまえだと言われるなら、これまで昭和二十四年以来今日まで行なわれておった旧法三十一号「寡婦 次に掲げる者で、扶養親族その他その者と生計を一にする親族で政令で定めるものを有し、かつ、老年者に該当しないものをいう。イ 夫と死別し、又は夫と離婚した後婚姻をしていない者 ロ 夫の生死の明らかでない者で政令で定めるもの」こういう法律の規定があったのは、この間に差別を設けないからこういう法律の規定があったのじゃないか。二十四年以来今日まで二十三年間その法律がそのままで生きてきたということから、いまのあなたの論理構成は全然成り立たないのですよ。私はもうそういう議論をしたくないんです、時間がむだだから。この問題についてはこれで終わります。一応この問題は与党の皆さんと話し合って、税法としては筋の通った税法として改定修正をしてもらいたいと思います。
 その次は三十四の二であります。
 三十四の二に老人扶養親族として「扶養親族のうち、年齢七十歳以上の者で障害者に該当しないもの」を老人扶養親族とするという新たな項目を設けることになったようであります。そこでこの場合に、老人の問題でありますけれども、老人というものを一括してここで扶養親族と規定をしておるわけですが、私が前段でさっき申し上げたように、法律というものは今日の時点から将来に向けてものを見ながら当然制定されるべきものでありますから、今後の老人家族の実態というものを考えると、私は老人というのが扶養家族、いわゆるさっきの家庭ですが、同一家庭内に扶養家族としてある場合と、それから別居家族で、しかし全部費用は子供が持つという扶養老人と、二つ扶養老人というのがあると思うのです。これからは当然核家族が進行すればするほどそういうものが起きてくるんじゃないか。そうすると、せっかくここで扶養老人の控除というものを考えるときに、さっきの追加的費用に着目するならば、この中身は同居の扶養老人親族と別居の老人扶養親族というものを分けて考えてしかるべきではないだろうか。追加的費用が多くなるのは、老人がもし生きておるとするならば、その別居をしておる老人に対して仕送りをするほうが老人が同一家族内で生活をしておる者よりも追加的費用が多くなる、こう思うのです。これらの点については、この問題をせっかくここで取り上げるのですから、-将来に対しては、私はそういう方向が多いのじゃないかと思うのです。-老人は児童家庭局じゃないんですか、社会局ですか。
○松下政府委員 社会局でございます。
○堀委員 今後の日本のいろいろな家族構成状態等を見ると、外国では老人夫婦がスープのさめない距離に暮らしておるのがいいといわれているということで、実は私自身も両親と別個に暮らしておるわけです。父はいま満九十二歳になっております。私は長男ですけれども初めから別個に暮らしておる。だんだんそういう家族というのはふえてくるのじゃないかと思うのですが、やはり別個に生活をしておる者と同一家族として同居をしておる者とはだいぶん費用に差がある。これは常識でわかることなんで、この点に着目するならば、追加的費用の面ではいまの老人扶養親族の問題も少し実態に即した考え方を取り入れて、このような十ぱ一からげの処置でなしに考慮するのが相当じゃないのか、こういうふうに思うのです。これは技術論じゃありませんから政務次官、いまの私の問題提起どうですか、これは一般常識論の話ですが……。
○田中(六)政府委員 今回そういう区別はいたしておりませんが、考えの中にそういう考えは浮かぶと思います。
○高木(文)政府委員 老人の場合に限りませず、最近の問題の一つとして、本人と扶養家族が別に暮らすという場合がいろいろありまして、企業によっていわゆる別居手当というようなものを出しているところもありますが、出していないところもあります。それを税のほうでも何か考えたらどうかという問題がございます。費用論として議論してまいりますと、確かに夫婦と子供が一緒に暮らしている場合と勤務の都合あるいは子女の教育等の都合からやむを得ず別に暮らしている場合では費用が別にかかるということがあると思います。お年寄りとできれば一緒に暮らすことが望ましいと思いますけれども、いろいろな事情で許さない場合がある。よって別居になっている。よって費用がよけいにかかるという場合どうするかというお話につきましては、費用論としてはいま私がちょっと触れました本人と妻、子供等の関係の場合と同様にそういう問題はあり得ることだと思っております。ただ現在のところでは、扶養控除の制度につきましても、別居なるがゆえに扶養控除を拡大するということはいまの段階では別に考えていないわけでありまして、そこまでこまかくいたすことにつきましては、これはかねがねいろいろ御議論もあるところとは思いますが、私どもとしては非常に制度が複雑になるということで、なるべく複雑にしたくないということもあってそこまではいま見込んでないわけでございますので、ただいま御指摘の点もいま申したようなことと関連した問題として今後の検討の課題になろうかと思っております。
○堀委員 この問題は今後の新しい問題ですから、いま直ちに修正をしてくれとかなんとかというつもりはない。ないですけれども、いまこの問題にお触れになった中で、一般的扶養家族、要するに子供の就学のために東京なら東京へ行って去るから追加費用がかかるというのは、現段階ではそこまで扶養家族の問題で見る必要がないのじゃないかと私は思っているのです、その人たちの地元にも大学があるのだけれども東京へやっているという問題があるでしょうから。
 しかし年寄りの世代と次の世代が一緒に暮らすかどうかという問題は、今後の家族生活の中では非常にむずかしい問題になっているわけですね。私は別居するのが正しいと思っているのです。年をとった人たちの世代感覚、生活環境いろいろな問題とその次の世代との問題とはいろいろ違うのですね。実際に違う。今日私の父が健康で満九十二歳までも長生きをしておる理由の一つの中には、別居生活によっていろいろにわずらわされることなく、老人は老人のペースでずっと生活をやってきたということが非常に役立っておると私はそれなりに評価しておるわけです。父の側から言わせれば、要するに西欧個人主義的な概念で、おまえたちはおまえたちの生活をやれ、われわれはわれわれの生活をやる、こういう考えがあったからこうなっておるわけでありますが、私は、この考え方はだんだん広く行き渡るし、そのことが家庭内におけるトラブルを避けて、しかし老人たちに対してそれなりの配慮もできるということになっていくとするならば、老人の問題というのは、そういう意味での扶養家族の取り扱い上の問題とは別個の問題だと思っているのです。特に今後老人問題というのは――厚生省では社会局ですか、社会局に来ていただけばよかったのですが、私どもの今後当面する問題の中で非常に重要な問題というのは、私は老人に対する政策だと思う。今後非常に急速に老人はふえてくるわけですし、老人が非常にふえてくる中で、やはり老人の問題については少しきめのこまかい政策が当然税制の中でも配慮されてしかるべきじゃないか、こういうふうに私は思うわけであります。
 そこで、この老人扶養親族を設けてもらったのは非常にいいのですけれども、これは十六万円の控除になるわけです。これは上限が、基礎控除配偶者控除がいま二十万円ですから、それを上回るのはいかがかという点については私もそれなりに考えますが、一般扶養控除が十四万円、配偶者控除基礎控除が二十万円とするならば、私は、やはり老人問題をもう少し真剣に考えるという点では、十六万円ではなくて十八万円の老人扶養親族控除であってもよかったのではないか、要するに一般の扶養者のほうに近づけるのではなくて、できるならば配偶者控除基礎控除の上のほうに近づいた位置に置いても、私は、老人に対するフェーバーとしては相当ではないのか、こういう気持ちがするわけです。たいへんこまかい話になりますけれどもね。ですから、これらについてはいま直ちにこの段階で修正しなさいということを私は提案しませんけれども、来年度の税制改正においては十分これらの問題を配慮してもらって、老人扶養親族という項目を新たに設けた以上、その設けた趣旨が実際にもまた将来に向かっても生きてくるような制度として、来年度の税制改正の際にひとつ十分これは検討してもらいたい、こう考えるわけであります。政務次官、いかがでございましょうか。
○田中(六)政府委員 堀委員が御指摘のように、基礎控除配偶者控除は二十万円ですし、それ以外の控除でいま最高の控除額になっているのが特別障害者控除十六万円、そういうようなものを勘案しますと、この程度でいいんじゃないかというのがわれわれの考えで、将来また十分考える余地はあると思います。
○堀委員 その次に、今度の改正の中で、所得税法第二百三十二条財産債務明細書の提出というのが設けられておりまして、これがこれまでは年所得一千万円でありましたものを二千万円をこえる場合に改めたいというのが法律の改正趣旨のようであります。
 そこで、この問題について少しお伺いをしたいのでありますけれども、この財産債務明細書が提出をされて、これが一体どのように活用されておるのか、これについての何らかの統計資料その他関連した資料等が現在あるのかどうか、ちょっと国税庁にお伺いをいたします。
○江口説明員 実は財産債務明細書につきましては特に報告を求めておりません。したがって、いまのところ手元に統計的なものがございませんが、私、四十一年に所得税課長をやっておりましたときに、納税の数が非常にふえる、ふえる中で税務職員の数はふえない、したがって効率的な仕事をする必要があるということが一点。それから高額所得者、いわゆる大口資産家等につきましては継続管理をする必要がある、こういう観念で、運営要領でこの財産債務明細書を確実にとるようにというような指示をいたしまして、各局におもむいて事務視閲の段階で実態を見てきたことがございます。たしか私の一記憶では、三十三年にこの制度が復活いたしまして、三十年代では、私、当時回りまして聞いた状況では、当時も一千万をこえる場合という提出義務の時期でございましたが、大体半数程度出ておるというのが私の実感でございました。問題になりますのは、すでに数年前から、当時はまだ公示の限度額が低かったわけでございますが、公示の限度額とは直接関係しておりませんけれども、おおむね公示の限度額以上になる者で、特に一千万ということであれば、三十年代には大口資産家であり、また大口の所得者であるといったような感じが強かったものですから、特に財産債務明細書については十分にこれを確保する、しかもそれに基づいて大口資産者の継続管理をするということを強く求めまして、最近では、これも統計がないので想像の域を脱しないかもしれませんが、その後運営要領で強い指示をした後の事務視閲によりますと、おおむね提出をされておる。それからなお、確定申告のときまでに提出を求めるわけでございますが、その直後に申告審理の作業をいたします。その段階でも特に大口の者につきまして未提出の分については提出の勧奨をしておるということでございます。
 それから、活用の状況でございますが、特に大口の資産家あるいは大口の所得者につきましては財産の移動がかなり広範囲に行なわれる。またひんぱんに行なわれるというのが実態でございます。したがって、財産の移動状況を調べるためには、どうしてもこうしたものを確保する必要があるということで、財産の移動状況によりまして所得の存在を確認する、あるいは御本人にとりましては、確定申告の際に有力な資料にもなるということにもなるわけでございます。なお、それらの資産につきましては、運用所得がございます。たとえば株式あるいは利子所得もございましょうし、あるいは不動産所得等が最近特に目立ってございますので、これらのために申告審理の段階で十分に活用するということで継続管理をしております。
 ただ、地域的に申し上げますと、東京等の場合は、四十五年の統計でございますが、七万八千ほどの該当者がございますが、そのうちの約半数が東京に集中しております。したがって東京の場合には、一千万以上ではございますけれども、実務的には大体二千万以上を主として継続管理しておる、こういう状況でございます。
 なお、補足いたしますと、提出の状況につきまして新たに一千万をこえるクラスになった方々につきましては、こういう規定があることについて不知の場合が多うございます。したがってこれらは確定申告のとき、あるいはその直後の申告審理のときに提出の慫慂をする。なかなかこれが実行されないという悩みが実はございます。しかし新たに一千万以上の方になられた場合でございましても、二年目、三年目には必ず出しておられるというふうに、われわれは現地の調査で確認してございます。
○堀委員 実はいまの御報告の程度だろうと私も想像しておったのですが、税法で規定をして、提出を求めるということになったものが、いまのあれなら罰則も何もありませんから、出さなければ出さないでいいんだ、出した者が損する、といいますか、正直者がばかを見ているようなことになるのじゃないかと思うのです。これが出ていなければ、いまあなたのおっしゃったように、要するに継続管理はできないのです。その点では納税者の側からすれば、出さないほうが所得把握の面でもたいへん都合がいいと思うのです。
 だから、こういう制度を設けた以上、正直者がばかを見て税金をきちんと取られて、ずるをする者は何もとがめられないで、結局税金が多少でもごまかしがきくなんということを、税法に書いておいて認めておるなんということは、私は少し問題があるという気がするのです。だからこういう制度を置く以上は、私、二千万でも三千万でもそれはいいですよ。今度二千万円にするのを私ちっとも反対するつもりはございませんけれども、きめたらきちんとやらせて、同時にその資料を活用して、いまの目的が、おそらくそういう資産の増減その他もにらみながら、やはりこれはストックで見ると同時にそれがフローでどうなっているかということを見ようということでしょうから、それを生かすようにしないならやめたほうがいいのです。置く以上は置くだけの目的をちゃんとやるのでなければ、納税者のほうからすればむだな手数をかけさせられておったということになりかねないと思うのです。ですから、この点本年度はもうすでにできておりますからしかたありませんけれども、そんな重い罰則をつける必要はないけれども、何らか提出をしなさいという以上は、提出を義務づける何らかのものを担保する必要があるのじゃないか、こう思うのですが、それが第一点。
 第二点は、率直に言うと、そうした形でとったものは少し有効に使ってもらいたいということです。特にいまのように、あなたのところではこれは質問しても実態がわからないわけだ。要するにわれわれの手元には報告を徴しておりませんからわかりませんということでしょうから、率直に言うとこの事案については質問にならないのです。だけれども、これは相続税との関係で、昨年、昭和四十六年度の相続税該当者は一体何人ありますか。
○高木(文)政府委員 約二万五千でございます。それは被相続人のほうの数でございます。
○堀委員 もちろんこれはいま年所得が千万円ですから、相続税との関係でこれは必ずしもどういうふうになっているか私もよくわかりません。わかりませんけれども、少なくともこの二万五千人の中にはその三分の一か四分の一か私もわからないけれども、この財産債務明細書提出者が死亡したことによる財産の相続という問題があるだろうと思うのですね。これらの問題について、それではそういう財産債務明細書が相続税の場合における調査と一体どういうふうになっておるのか、伺ってもちょっと答弁できないでしょう。できますか。
○江口説明員 相続税の場合には、金額がかなり大きなものを対象にすることに現在の事務体制がなっておりますので、この大口資産家のうちで、特に局によって多少の出入りはございますが、全国的に統一しておりますのは、資産の中で、負債は除きまして、純資産でもって、純資産といいますか正味資産でもって五億円以上のもの、これは必ず継続的な管理をいたしております。それから地方によりましては、さらにそれを下回った分につきましても財産債務明細書だけではございませんけれども、ほかの登記資料、あるいは法人のほうからとりました株式の移動資料、その他ももちろん継続管理の資料として使っておるわけでございますが、おおむね五億円以上の資産家につきましては、これは必ず継続管理をするという体制になっております。
○堀委員 それはいままず財産債務明細書で出てきた財産が五億円以上ある者を継続管理しておる、こういうことですか。――そうじゃなしに相続税というのは、要するに相続が起きたときに五億円というのはわかるのであって、その前にはわからないわけですね、相続の場合には。どちらですか。要するに相続税対象ではなくて、いま私が申し上げたような財産債務明細書を一つの資料として、五億円以上という線をその財産総額五億円というところで切って、その上は継続管理しておる、こういう意味ですか。
○江口説明員 財産債務明細書も一つの資料になっておるということで、ほかの資料も全部総合して、所得、法人のほうから資産税担当部門のほうに配付した資料を総合してということでございます。
○堀委員 要するに私が申し上げたいことは、資料をとるのですから、資料をとると、せっかくとった資料はやはり生かして使ってもらわなければ制度をやめたほうがほんとうはいいと私は思うのです。だからそういう意味では、少なくともこういうあれをとられたら、財産債務明細書で見るとどういう形になっているのだ、今度二千万円以上になれば、二千万円以上の所得者というものは一体どういう資産を持ち、どういうふうになっているんだというような資料を私は当委員会に一回報告をいただきたいと思うですね、せっかくこういうものをとっている以上。やはり日本における高額所得者というものの実態というものはどういうことかということを、われわれは課税上の問題から見ても頭の中に置いておく必要があるし、特に相続税の問題はあとで触れるわけですけれども、私はかねてから水平的な相続は大いに減税しろと申し上げて、今日だいぶこれは具体化し、今回の相続税改正でもたいへん前進しておることを私は喜んでおるのですが、垂直的な相続は私はもっときびしくしていいと思うのですよ。いまの民主的な世の中で、言うならば継続的に、働かざる者食うべからずではないけれども、やはり働くことの中から所得が稼得され、そのことによって生活を改善するということが本来の形で、多額の遺産を相続して、その相続した遺産によってぬくぬくと暮らすなんということは、本来今日的な課題ではないのではないか、こういうふうな考え方に私は立っていますが、要するに妻は夫とともにその財産を稼得するためにいろいろと努力したわけですから、その妻が夫の財産を引き継ぐときには、これはもうできるだけ少なくていい、今度垂直的にいくときにはかなりきびしく取っていいのではないかというのが私の基本的な考え方なんですね。
 そうすると、その垂直的に取るのをいかように取るべきかということを考える際に、私はこれまでの相続税で皆さん方が出していただいている資料ではなくて、この財産債務明細書を完全に分析した資料を出していただければ、われわれは今後のあるべき相続税というものをどういうふうにしたらいいのかという問題の大きな端緒になるし、それは主税局が今後の相続税の税制を検討する際にも重要な資料になるのじゃないか、こう私は思うのです。さっき伺ったように、本庁には資料を徴収しておらぬというようなことでは、私はこの法律第二百三十二条、所得税法にここまで書いて報告を求めるということにしておる意義が非常に少ないのではないか、こう考えるのでありますが、この点についてはひとつ何らか提出を担保するような義務を課する一つの問題を、これは来年度の税制改正でけっこうですが、ぜひひとつ取り上げていただきたいし、同時に本年度二千万円になったら二千万円になったものについて、あるいは過去における提出資料が一体何%提出されておるか、所得階層別には一体どういうかっこうで提出されておるのだ、提出されたものについてはその分析は、土地を持っている者はどういう状態だ、有価証券はどうだ、預金はどうだ、おそらくこの中に犯則の中でひっかかるものもあるでしょう。犯則事件が起きたときには、その犯則事件が起きたものの調査をすると同時に、いまの財産債務明細書と突き合わせてみれば、財産債務明細書というものがどの程度の正確さを持っていたものであるかもわかるであろうし、同時にそれは相続税のときにあなた方のほうで総合的に調査してみれば、財産債務明細書がはたして正しかったのか虚偽であったのかということもその際わかることでありましょうから、やはりそのような各種の取り扱いを効率よく行なうことによって、初めて所得税法二百三十二条というものが設けられておる趣旨が生きてくるのではないか、このように考えるのですが、政務次官、いかがでございましょうか。
○田中(六)政府委員 財産債務明細書、これはまず私どもとしては高額所得者に提出させるということが第一でございまして、そのあとこれをどうするかという裏づけになることでございますので、まずこれを提出させる方向に指導していって、その後、堀委員のおっしゃるようなことに具体的に入っていきたいというふうに考えます。
○高木(文)政府委員 いま堀委員からおっしゃいましたいろいろの御意見、全く私ども同意見でございます。今回も、あるいは若干、単に金額限度を変えるというだけでなくて、多少内容的に変えるかどうかということも検討いたしましたのですが、まず、まさに御指摘のように、制度があります以上は正直者がばかをみるということにならないように、まず確実に出していただく。そうしてそれを国税庁、税務署のほうで十全に活用できるような体制を整備するというところから始めたいという気持ちでございまして、最近国税庁の仕事のやり方が漸次重点主義になっておりますから、全体はそういう方向には動いておりますけれども、財産債務明細書の問題一つに限ってみましてもまだまだ不十分でございますので、それを一方において整備しながら、制度的にも今後どういうふうにすべきか、その運用のしかたをにらみ合わせながらだんだんに進めてまいりたいというふうに考えております。
○堀委員 いま御両所の答弁でけっこうなんですが、ただこれまでせっかく資料があるわけですから、いまの提出率が一体何%だったのか、そういうようなことを合わせて、大綱的に所得階層別にはそれはどういうふうなことになっておったか、そんなに正確なものじゃなくてけっこうですから、一ぺん過去に集まった資料の中で適当なところで精査していただいて、分析をつけて当委員会に提出をしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
○江口説明員 従来のものが七万件をこえる件数でございますので……。
○堀委員 抜き取りでけっこうです。
○江口説明員 さっそく検討させていただきたいと思います。
○堀委員 七万もあるのですから、手数をかけるだけが能ではありませんから、適当なサンプルをとって、一ぺん資料として提出をしていただきたいと思います。
 以上で所得税法を終わりまして、次は相続税法でございます。
 相続税法は、さっき私がちょっと申し上げましたように、今回は配偶者についての配慮がさらに前進をすることになりました。私が予算委員会でこの問題を取り上げまして以来、漸次改善をされて今日に至ったことは、主税局の皆さん、たいへん御苦労であったと思うわけであります。ただ今度、この相続税法の改善の中で新たに障害者控除が設けられることになりました。私、これはたいへんけっこうなことだと思っておるわけであります。身体障害者その他の皆さんが家族にある人たちは、それこそさっきの追加費用が非常にかかるということもあるし、家計上、生活上いろいろ配慮が必要とされることは私も当然だと思うのであります。そこで、ここでただちょっと普通の障害者が、法律を読むと「相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の第十五条第二項に規定する相続人に該当し、かつ、障害者である場合には、その者については、同条から前条までの規定により算出した金額から・一万円(その者が特別障害者である場合には、三万円)にその者が七十歳に達するまでの年数(当該年数が一年未満であるとき又はこれに一年未満の端数があるときは、これを一年とする。)を乗じて算出した金額を控除した金額をもって、その納付すべき相続税額とする。
 2 前項に規定する障害者とは、心神喪失の常況にある者、失明者その他の精神又は身体に障害がある者で政令で定めるものをいい、同項に規定する特別障害者とは、同項の障害者のうち精神又は身体に重度の障害がある者で政令で定めるものをいう。」三項もありますが、これは省略いたします。
 これは私はたいへんけっこうなことだと思うのですが、一万円という額を算出した基礎は一体何か、これを御説明願いたいと思います。
○高木(文)政府委員 一万円という額は、そう正確に計算をして積み上げて金額を算出したものではございません。ただ、それではなぜ二万円ではなしに一万円にしたかという点を御説明いたしますと、養護施設であるとかいろいろの療養施設であるとかに入っておる方々、その方々の経費がどのくらいかかるかということを一つ参考にいたしました。それから普通の生活はどのくらいかかるか。この普通の生活というのをどうやって見るか非常にむずかしいわけでありますが、一応たとえば生活保護基準というものを頭に置きながら見ました。その差額が、障害者なるがゆえにかかる経費ということで考えていくという考え方をとりますと、大体私どもの試算では月額にして一万円強というものがよけいかかる経費として考えられるのではないかというふうに思われます。
 一方現行制度でやや類似したものとして、未成年者控除という制度がございます。この未成年者控除においては、税額控除でやはり一万円という制度があるわけでございますが、未成年者控除の場合の考え方も、未成年者の場合に、養護施設等に入った場合にどのくらい経費がかかるかということで算定をしてやってみますと、これまたやや偶然でございますが、同じように月額一万円強よけいかかるというふうに考えられます。普通に家庭にあっての場合と、施設に収容していただく場合とで月額で一万円強かかるという関係があるかと思われます。
 そこで、基本の未成年者控除一万円という額が適当であるかどうかという問題が一つありますけれども、現行未成年者控除が一万円の税額控除になっているとすれば、未成年者なるがゆえに、少年といいますか、未成年者が、かりにそういう施設に入ってお世話になるという場合にかかります経費、それから障害者がかかる場合のかかります経費等が、大ざっぱな計算で恐縮でございますが、大体似たようなところではないかというようなところから、未成年者控除の控除額の一万円ということをベースに置いて、それにいわば右へならえしたという感じで一万円という額を出したわけでございます。なお、重度心身障害者についても大体同じように出したわけでございます。
○堀委員 相続税法による未成年者控除一万円というのは、いつからですか。
○高木(文)政府委員 現行の未成年者控除の制度ができましたのは三十三年でございまして、そのときから一万円でございますが、その前に税額控除ではなしに遺産控除といいますか、税額をかける前の財産額から引いていた時代がずっと続いておりまして、三十三年に切りかえます前は二万円であったわけであります。それを三十三年に切りかえますときに一万円にしたのですが、これはもし税率が五割であれば、財産からいままで二万円引いておったのを税額で一万円にすれば合うわけでございますが、五割という非常に高い税率にして考えるのは非常におかしいわけで、そういう意味からいいますと、従来の二万円の遺産控除から税額控除に切りかえるについては、おそらく数千円の税額控除で、そのときに切りかえるだけの問題でよかったのではないかと思いますが、そういう端数をつけるのもどうかということで、ただ一万円と置いたのだと思われます。
 そこで当時の一万円というのは比較的甘いというか、そういう感じになっておりまして、実は未成年者控除そのものの制度についても、はたして三十三年から今日まで据え置きでいいのかどうかというのには議論がございます。今度障害者控除を置きますについても、未成年者控除を従来どおり一万円のままでいいかどうかということ自体も一応議論をしてみたのでございますが、ちょうどいい機会でありますので、場合によりましたら未成年者控除のほうも直すことを考える必要がありはせぬかということも考えたのでございますが、いろいろ試算してみますと、先ほど申しました、未成年者について家庭で普通に親ごさんが子供さんを養育していく場合と、施設に入れて養育していく場合とのかかります経費との関係からいいますと、いまの平均税率で見まして、一万円くらいの税額控除でもまあまあのところいけるんじゃないかというふうに考えまして、未成年者控除の一万円を据え置き、それに障害者控除の一万円を見習った、こういうかっこうになっております。
○堀委員 ちょっと厚生省のほうに伺いますけれども、いまの障害者、未成年者はちょっと違うんですけれども、一体、家庭に置いておる場合と養護施設という話なんだけれども、私は、身体障害者であるとないとの違いが大きいと思うんですね、率直にいうと。だから、実際にもしこういうフェーバーを与えるというのならば、いまこの未成年の問題もありますから、何段階かになるわけ
 ですが、まあ未成年をはずして、未成年であれ成年であれ、児であれ者であれ同じと考えて、家庭の中にそういう障害者があるということでは、
 いまかなりいろんな追加的費用も必要であるし、ちょっと一万円というのは考え方としては、施設
 に入ると入らないとの差は一万円ということのようだけれども、私はそのものの考え方からすると、施設に入る、入らないはもちろんあるけれども、それを含めていえば三段階で、健康な子供が
 いるとき、それが身体障害児であるとき、身体障害児でなおかつ施設に入れておるときと、この三つを比べて、そして原点というのはやはり、障害児が家庭にいるときと施設にいるときの差ではなくて、健康児と施設にいる者とをかりに考えれば、この差でものを見るというのが本来の姿ではないかと、私はこう思うんですが、厚生省どうでしょうか、その点は。
○松下政府委員 正確に申しますとおっしゃるとおりだと思いますが、実は私ども、在宅の障害児に関しましての、特に養育に要する費用という正確な資料は、実は申しわけございませんが持ち合わしておりません。現在の考え方といたしましては、やはり特に重度の障害児、あるいは家庭の実情も加味されるわけでございますが、施設に収容いたしましてそれぞれの状態においてお世話をするというたてまえをとっております。したがいまして、大蔵省のほうに私どもから差し上げました障害児の養育の費用と申しますのは、施設の措置費の内容ではございますが、措置費の内容は、やはり障害児を養育いたしますために、その療育、治療というような面も含めましての総体の費用を計算いたしまして、それを措置費という形で公費をもって負担する。で、所得能力に応じて保護者から全部または一部――まあ全部はほとんどございません、一部でございますが、徴収するというたてまえをとっておりますので、家庭におきましても平均的な費用を計算いたしますと、やはり積み上げ計算をいたしまして、施設において療育を行なっております費用とそうたいした差はないであろうという前提で現在のところはものを考えておる次第でございます。
○堀委員 そうすると現在は、いまここで大蔵省が月一万円強と、こう言っておられる額は、その措置費をまるまる全部含めた額が大体一人当たり一万円強に現在なっていると、こういうことですか。
○松下政府委員 大蔵省から伺いましたところでは、大体の考え方といたしましては、先ほど先生御指摘の、健康な子供に対します平均的な養育費、これを現在生活費として法的に計算しておりますのは、一応生活保護法の保護費があるわけでございます。そういったところから大体推定いたしまして、それと施設へ収容いたしました際の費用の差が約一万円というふうに伺っております。
○堀委員 じゃ、その点は一応、いまのは厚生省側として、障害児に必要な額と、こういうことでありましょうからけっこうでありますが、その額が、重度の場合には三万円ということで新しく設けられた。これは、遺産がある障害児はたいへんこの点今度は恵まれることになりますね。私は、実はいいことだと思うのです。たいへんいいことなんですけれども、障害児の場合には、現在そういう相続税の対象になる者と、そうでない家庭にもたくさん障害児があると思うのですね。国としてこういう恩典を与えることはたいへんけっこうなんですけれども、そうすると、持てる者の障害児はこの際さらにフェーバーを与えられることになる。大体、遺産相続できる家庭というものは、フローの面でも当然大きなフローのあるところですから、日常にも、これまでもそうで、比較的恵まれた条件にあった。同時に、不幸にして父親か何かがなくなったとしても、遺産があり、その相続税をさらにある程度軽減してもらうから、その上において、その後といえども恵まれた条件のほうにある。片や、フローの小さい家計にある障害児というものは、ふだんでもあまり恵まれていない。もちろん父親なんかがなくなれば相続すべき財産も、そんなものはない。非常に気の毒な条件にある。格差がちょっと開くような感じがしてならないわけです。
 だから、私は、これはたいへんけっこうな制度なんだから、足を引っぱるつもりで言うわけではないんでして、ひとつこの際、こういう身体障害児・者のような、非常に社会的に激しい競争の中では生活をしていくのはきわめて困難であるし、この児はやがて者になり、生活をしていかなければならぬ。国としてもいろいろその就職その他についての配慮もしておるようでありますが、必ずしも十分ではないということになりますと、こういうものが今度新設されたことに見合って、来年度何らか、そういうもののない対象者、言うなれば、たいへんこまかい話になってくるのですけれども、身体障害児・者に対する、所得、フローの面から見た何らかの配慮、それは、すでにさっきお話しのように、施設に入れば所得の少ない人はまるまるかからない、所得のある者はそれについて追加費用を取るという仕組み、それはそうなると思うのですが、さらにそれを少しでも負担分を減らしていくとすれば、要するに歳出と歳入見合いでバランスがとれてくるんじゃないか、こういう感じがするわけです。政務次官、わかりますね、私がいま申し上げていることは。
 ですから、せっかくこの際税制上の面でこれをやっていただいたことはたいへんけっこうなんですが、あわせまして、そういうこれまでの権衡がちょっと、これでやや持てる者のほうが有利になっておるという点から、持たざる者のほうにも、平均的に何らかそういう配慮を歳出面で考慮をしてみるという必要もあるんじゃないかなという気がするわけです。きょうは長岡主計局次長も入っていただいておりますので、その身体障害児・者問題というのは、現在の日本のような高度の経済成長をしてきた国にとっては一番弱い部分の人たちでありますから、さっき私が取り上げた老人問題と合わせて十分な配慮をしてもらいたいし、まあ本年度の予算においても十分配慮してこられたと思うのでありますが、さらにこの点についての何らかの配慮を考えてもいいんじゃないか、私がいま問題提起をしたことについての配慮があってしかるべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。最後にお伺いしておきます。
○長岡政府委員 社会保障制度全般の問題につきまして、基本的な考え方と申しますか、ほかの案件の審議の際にも私再々申し上げておりますけれども、わが国は、率直に申し上げて、社会保障制度全体が欧米先進諸国等に比べて後発国であることは間違いありません。ようやく制度的には先進国とメニューがそろった。しかし内容はまだ、年金制度が未熟であるとかそういうようなこともございまして、水準的にはまだまだ不十分な点も多々あることも事実だと思います。そういうものに対するキャッチアップということが、社会保障制度全体といたしまして、今後国としては非常に重要な課題になってまいります。したがいまして、財政当局の立場といたしましても、それだけの財源をいかに捻出していくか、またいかに負担区分を考えていくかということは、非常に重要な今後の課題であろうと考えております。中でも、いわゆる社会保障制度の趣旨からしますと、社会的な弱者に対する保障の強化と申しますか、そういう点に最重点を置くべきであることは当然であろうと思います。
 具体的に申しますと、結局、社会的弱者の一つの表現である老人対策、それからいま先生が御指摘になりました心身障害者対策と申しますか、こういう点についての施策の充実強化ということが、やはり非常に重点的に取り上げてまいらなければならない問題だと考えております。四十七年度の予算は、いわゆる社会福祉の充実ということを一つの大きな重点項目として掲げておりますけれども、御承知のとおり、老人対策の予算は前年に比べて約五二%くらい、それから心身障害者対策の予算も前年に比べますと約二七、八形と、相当重点を置いて充実をはかってまいったつもりでございますけれども、いまのお話もございまして、私どもといたしましては、直接のお答えにはならないかもしれませんけれども、このような相続税上の措置がとられたことに見合う措置をどういうふうにするかというところまで実はこまかい検討はいたしておりませんが、全般的な問題といたしまして、相続税のこの措置の恩典に浴さない階層の、心身障害児等をかかえておる家庭に対する措置等につきましても、今後、社会保障全体、あるいは国の財政全体の財源事情もございますけれども、重点的に配慮してまいりたい、かように考えております。
○堀委員 政務次官、いまの次長の答弁、私けっこうだと思います。どうかいまのように、これと引きかえに中身をどうこうということの必要はないと私も思います。しかし考え方としては、どうもいまの所得構成その他から見て、やはり所得の高い者は常に恵まれていて、所得の低い者のほうに余分の負担がかかる傾向というのはどうしても避けられないと思いますので、どうかひとつ厚生省においても、今年の予算の平均伸び率が二一・八%ですから、二七%程度というのは確かに平均よりは高いわけでありますけれども、さらにこういう高度成長の中で、いま不景気といっても、特に日本は諸外国に比べればやはり高度成長なんですから、そういう中ではやはり障害児・者に対する配慮というものは格別の配慮があってしかるべきだと思いますので、そういう要求をひとつしていただきたいと思うし、あわせて、そういう要求に基づいて大蔵省としてもこの問題についてはぜひ前向きに考えてもらいたいと思いますが、ひとつ政務次官のその点のお考えをお聞きしたいと思います。
○田中(六)政府委員 大蔵省といたしましても、十分その点を配慮してこれからやっていきたいと思います。
○堀委員 それでは、あと法人税に関連して石油ガス税の質問をする予定にしておるのですが、これに入るとまたかなり時間がかかりますので、ここまでにさせていただいて、残余はひとつ次回にさせていただきます。
○山下(元)委員長代理 午後二時より再開することといたし、この際暫時休憩いたします。
   午後零時十四分休憩