フレンチトースト訴訟

父ちゃん大法廷に立つ(計画)



児童手当不支給に対する審査請求書案

 私の子は全員二十歳以上で児童手当はもらえませんが、知人が児童手当が所得制限による不支給の決定処分を受け、それに対する審査請求をすることになったので、審査請求の理由を考えてみました。ヒントにでもなれば幸いです。

 審査請求は不支給決定通知が来てから3ヵ月以内にしないといけませんので、もし審査請求を考えているかたは期限に注意してくださいね。

 

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<審査請求の趣旨>

児童手当不支給の決定処分の取消しを求める。

<審査支給の理由>

 児童手当の目的は児童手当法第1条に以下のように記されている。
「この法律は、子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第七条第一項に規定する子ども・子育て支援の適切な実施を図るため、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的とする。」
審査請求人は児童を養育する者であり、審査請求人の養育する児童は次代の社会の担う者であるので、児童手当の立法の趣旨を踏まえれば審査請求人に児童手当を支給するべきである。
 しかしながら同法第5条は養育する者の所得が政令で定める額以上であるときは手当を支給しないとしており、処分行政庁は所得額が該当する審査請求人に手当を支給しないという決定をした。
 現児童手当の制度は平成22年に創設された子ども手当制度を引き継ぐものであるが、子ども手当の創設にあたっては所得税法と個人住民税における15歳以下の扶養親族に対する扶養控除が廃止となっている。扶養控除は、憲法11条および憲法25条1項の要請によって、生活に必要な費用は担税力をもたないため課税対象外にしたものと解され、所得の多寡にかかわらず、すべての国民に適用されるべきものである。そうすると、扶養控除を廃することの代わりである現児童手当は、子どもの生活に必要な費用にも課税する代わりに手当を支給しているのであって、もし手当を支給しないとなれば、救済なく子どもの生活に必要な費用にも課税することになる。その点、税法上16歳以上の扶養控除には所得制限がないことからしても、所得が多いことを理由に15歳以下の扶養親族に扶養控除もそれに代わる手当もないというのは整合性を欠き不合理である。
 そもそも児童手当制度は、制度の趣旨からして貧困対策ではなく全ての子どもの養育者に対する支援制度であるのだから、財政対策のために所得水準によるマイノリティを排除するのは、憲法14条1項が禁ずるマイノリティに対する差別であり、マイノリティの権利保護という民主主義の原則に反しており、児童手当法第5条の規定は立法裁量の範疇を超え憲法(11条14条25条)に反しているので無効というべきである。
 なお、日本は国際連合児童基金UNICEFの掲げる「子どもの権利条約」を締結しているが、同条約第2条には保護者の収入で子どもを差別してはならないことが明記されており、本件処分は同条約第2条にも違反するというべきである。
 よって、児童手当法第5条の所得制限の規定は違憲無効であるから同条に基づいて行われた本件処分の取消しを求める。

 

****ここまで****

憲法11条(基本的人権)を持ち出すのは適当でないかもしれません。憲法25条も憲法14条も広範な立法裁量が認められるエリアなので厳しいところではあります。でも個人的にはマイノリティの排除案件なら合憲性の推定は排除してもいいのではないかと思ったりします。

また子どもの権利条約を持ち出しまていますが、児童手当は子どもにではなく親に支給するものだと反論されるかもしれません。

 

で、考えられる裁決ですが、「棄却」でしょう。

棄却理由としては、こんな感じでしょうか。

「請求人は児童手当法第5条が違憲無効であることを理由に処分の取消しを求めているが、法令が違憲かどうかは司法の判断によるべきものであり、本件処分は児童手当法に基づき正しく行われており違法な点はないので請求を棄却する。」