フレンチトースト訴訟

父ちゃん大法廷に立つ(計画)



第3回口頭弁論(対所得税)

税調のほうは、なんか寡婦控除で盛り上がっていますが、こちらは静寂に満ちています。今回の口頭弁論の傍聴者はゼロでした。私は人が多いとキョどるので、助かります。ありがとうございます。

 

今回から、左陪審裁判官が女性に変わったみたいです。左陪審って、判決文のドラフトを書く人だと私は勝手に思い込んでいますが、途中で変わることもあるんですね。

 

裁判長「今回は詳しく主張されていますね。被告は(当然)反論しますね?」

 

少し、褒められた気がしました。

それから、自分の主張はとんちんかんじゃないんだなと安心しましたし、地方税みたいに3回で結審、敗訴みたいにならなくてよかったなと思いました。

 

被告側は、反論を来年の2月14日までにするそうです。すてきなバレンタインになりますね。

 

気になったのは、裁判長に

「sakurahappyさんは、他に主張することはないですか?」

と聞かれたことです。想定外の質問だったので答えを用意していませんでした。

「今は、考えていないです。」

 

そう答えたものの、絶対に、不足してる主張があるってことですよね。

なんだろう。

栄養のあるものを食べて考えましょう。

 

次回の口頭弁論は、

2月27日(木)11:30 東京地裁419号法廷です。

 

なんかインターバル長いなぁ

 

気がつけば、悪党

今度の税制改正寡婦控除は女性にも所得制限がつきそうですね。

 

やっと男女平等になりそうです。

 

そうすると

 

私は裁判を続ける理由が無いような気がします。

 

この裁判にはなんの意味があるんでしょうか?

 

 

今まで、差別撤廃を目指してきましたが、

 

上告して、これから最高裁だという時になって

 

差別がなくなりました。

 

ちゃんちゃん。

 

めでたしめでたしです。

 

 

こうなると、私は味玉チャーシュー麺替玉付きを食べる口実のためだけに裁判をすることになります。我田引水、私利私欲です。

 

気がついたら悪党になってました。

 

 

 

男女平等のため、女性にも所得制限を付けるということに対して、世論はどちらかというと賛同しているようです。今まで過剰な優遇だったと認識されているのでしょう。私もこの裁判を始めた当初は同じ認識がありました。

 

しかし、今、私はこの主張に違和感を感じています。それは立法の経緯を知ってしまったからです。

 

元々出費が多くなることを考慮して作られたのが寡婦控除です。そして父子家庭も同じだとして寡夫控除が作られました。その時に、「男性と女性では区別すべき」「あらゆる寡夫に控除を適用することはしない」という考え方から所得制限が付けられました。女性を過剰に優遇したのではなく、男性を冷遇したのです。それを今になって女性も冷遇して男女平等にするというのは、道義にもとる行為ではないでしょうか?

平成29年に、富裕層への優遇だとして配偶者控除には所得制限が付けられましたが、その額は1000万円(年収1220万円)です。

甘利さんが言うように何千万も稼ぐ女性には必要ないというのはごもっともかもしれません。

ですが、500万円は富裕層の境界ではありません。

母子世帯にも所得制限が付けるということは、共働き世帯の父親と同じ税額を負担させるということです。これは垂直的公平負担の原則に反します。

 

 

もし、私が勝訴したとしても、その前に母子世帯への所得制限が付けられてしまったら、それを判決で撤廃させることはできません。

 

もしかしたら再見直しのきっかけぐらいにはなるかもしれませんけど。

 

 

ええい

 

こうなったら、もう、もっと悪党になってやろうかと思います。

 

目指すは味玉チャーシュー麺替玉2回を

3人の息子達と

食べる事にします。

 

これで、野望が4倍に膨らみました。

 

 

私は悪党から大悪党になりましょう。

 

Final lunch box

父子家庭9年目になりますが、一番下の子が高校3年生で、来週から卒業まではお弁当が要らないので、ついに今週でお弁当作りが終了になります。

一時期は自分の分も含めて4人分のお弁当を作っていた事もありますが、見た目の良くないお弁当を、みんなよく食べてくれました。

最終日はスペシャルバージョンのお弁当を作ろうと企んでいます。

対所得税 原告準備書面(1)

令和元年(行ウ)第236号 更正処分取消等請求事件

原 告  sakurahappy

被 告  国(処分をした行政庁:川崎北税務署長)

 

東京地方裁判所民事第51部1C係 御中

 

原告  準  備  書  面 (1)

令和元年11月25日

              

原告 sakurahappy         印

 

 原告は,当準備書面にて被告の令和元年9月26日付準備書面(1)について,以下のとおり認否と反論をする。

 

目次

第1 被告準備書面(1)に対する認否

第2 原告の反論

1 ひとり親は,総じて特別な出費を要すること

2 高所得ひとり親に性別による租税負担能力の差異はないこと

3 憲法14条1項の違憲性判断の枠組みと本件区別

4 被告の主張する立法目的の正当性

5 立法目的と立法手段の間に合理的関連性がないこと

6 所得要件の設置理由の分析

7 本来の立法目的に正当性がないこと

8 昭和60年大法廷判決の違憲審査基準より厳格にすべきであること

9 平成6年第三小法廷判決と本件区別

第3 結語

第1 被告準備書面(1)に対する認否

(1)8頁9行目の甲第3号証の元となった資料が不明であるという点については以下の通りである。総務省統計局は5年毎に実施する就業構造基本調査において,母子世帯と父子世帯それぞれについて収入階級別の調査をしている。この調査における母子世帯や父子世帯は,ひとり親と18歳未満の子で構成されている世帯である。これらの調査データは一般に公開されており,直近の3回のデータを集計したものが甲第3号証となる。集計元のデータは,平成19年分が甲11号証と甲12号証,平成24年分が甲13号証と甲14号証,平成29年分が甲15号証から甲20号証である。これらの資料は度数分布表なので,各階級値は次の公式で求めている。

[階級値]=( [階級の上限]-[階級の下限] )÷2

※ただし,上限がない場合は下限を階級値とする

そして平均値を求める時は,次の公式で求めている。

 [平均値]=( [階級値]×[度数の合計] )÷[度数の合計]

 

(2)8頁17行目の養育費の部分については,以下の通りである。平成28年度全国ひとり親世帯調査結果報告(乙第10号証の3)の56頁によると,養育費を受け取っている母子世帯の母親(以下,母子世帯の母親を単親母という)は24.3%で平均月額は43,707円であり,父子世帯の父親(以下,父子世帯の父親を単親父という)は3.2%で平均月額は32,550円である。ここから全体での平均年額を求めると,

単親母   43,707円 × 12ヶ月 × 24.3% = 127,450円

単親父   32,550円 × 12ヶ月 ×  3.2% =  12,500円

となり,離婚した配偶者から受け取る養育費は単親母のほうが多くなっている。

 

(3)8頁「第2 事案の概要及び争点」については概ね認める。イ号寡婦については単親母以外にも子以外の扶養親族を扶養する離死別女性も含まれているので,本件は特にイ号寡婦のうちの単親母と,扶養関係が同じである単親父を比較したときに,単親父である寡夫側にのみ所得要件があることが憲法14条1項に違反して無効であるために,当該規定を適用し,原告は寡夫に該当しないものとされた本件各処分が違法であるか否かが争点である。

 

(4)9頁「第3 前提となる事実関係」については認める。

 

(5)12頁「第4 本件各処分に係る経緯」については認める。

 

(6)12頁「第5 本件各処分の根拠及び適法性」については,各年で所得が500万円を超えていることを理由に寡夫控除が適用されていないことについては違法であるとして争う。

 

以降は「第6 被告の主張」についての認否である。

 

(7)24頁「1 はじめに」について,「本件において・・・所得要件を定めた部分が無効である旨主張するものと解されるところ」まで認め,その余は争う。寡婦控除も寡夫控除も通常に比べて特別な出費を要することを考慮したものであり,所得500万円を超える単親父だけが,その出費がなくなるわけではないのだから,単親父も所得に限らず認められるべきであり,寡夫にのみ所得要件を課した部分を無効とすべきである。

 

(8)25頁「2 寡婦及び寡夫の意義並びに寡婦(寡夫)控除の規定の概要」について,「(1)寡婦(寡夫)控除の規定」から29頁3行目「・・考慮されたためである。」まで認め,その余は争う。また「一律的に中低所得者に限る」という表記は引用元(乙6号証)からして日本語的に矛盾していることを指摘する。それは,まるで単親父全員を例外なく同じ扱いにしているかのような印象に導く表現となっているが,所得水準で扱いが違うのであるから,これを一律(的)というのは不適切である。

また寡夫にのみ所得要件が設置された理由については第2章で反論する。

 

(9)29頁「3 寡夫の所得制限が憲法14条に違反するものではないこと」について,「(1) 憲法14条1項適合性の判断の枠組み」については認め,「(2) 寡夫の所得制限を定めた規定が憲法14条1項に違反するものではないこと」については争う。これらについても改めて第2章で反論する。

 

第2 原告の反論

 

当書面では,所得500万円以下の者を中低所得の者とし,所得500万円を超える者を高所得の者とする。また,給与所得控除前の収入に換算すると,所得500万円は収入688万8888円に相当し,700万円に近似するので,収入額700万円を階級の境界にしている統計情報を扱う上では,700万円以下の者を中低所得の者とし,700万円を超える者は高所得の者と表記する。

 

1 ひとり親は,総じて特別な出費を要すること

 寡婦控除は,昭和26年に,「扶養親族を有する寡婦は,職業の選択に制限を受け,所得を獲得するのに特別の経費を要すること」を考慮して創設されたものである。そして,寡夫控除を新設するにあたっては,「職業選択に制限を受けたり,所得の獲得のために特別の出費を要したりするのは主に幼児や修学中の児童などの子供を有するとき」であるとして単親父にのみ認められたものである。

 単親母でも,単親父でも,求職するとなれば条件は厳しくなる。そして,家事や養育を配偶者と分担することができないひとり親は,家事や養育にかけられる時間が制限され,それを補うために割高の商品やサービスを購入することになる。また,養育にかかる費用を一人で負担するので,通常に比べて出費がかさむことになる。すなわち,ひとり親に適用される寡婦寡夫)控除は,通常に比べ特別な出費がかさむことから相対的に租税負担能力が低くなることを考慮し,税負担を軽減するためのものである。

となると,ひとり親の特別な出費は,性別や所得水準に関係なく,当然ながら高所得の単親父だけが,このような出費が発生しないということはない。しかし,高所得の単親父は,寡夫控除の対象から除外されており,家事や費用を分担することができる共働き世帯で高所得の父親と同額の所得税を負担しなければならない。

 

2 高所得ひとり親に性別による租税負担能力の差異はないこと

 被告は,単親母と単親父では,年間収入,就労の状況,仕事の安定性,住居保有状況などの点において差異が存在するとして,単親父は単親母に比べて相対的に高い租税負担能力を有していると主張している。しかしこれらの比較は単親母と単親父の全体を比較したものである。本件区別は,高所得の単親母と高所得の単親父を区別し,法的に異なる扱いをしているのだから,被告はこの両者の租税負担能力の差異を立証しなければならないところ,なんら言及していない。ゆえに,原告はこの両者に租税負担能力等の差異がないことを立証し,全体的な差異の実態は,中低所得ひとり親の差異であることを証明する。

  • 年間収入の差異

まず,被告が示した通り,平成27年の単親母の年間平均収入は243万円であるのに対し,単親父については420万円である。ところが,年収700万円を境界にして平成29年の就業構造基本調査の結果を集計すると(甲3号証),中低所得の単親母の年間平均収入は221万円であり,中低所得の単親父の年間平均収入は376万円であるが,高所得の単親母の年間平均収入は1147万円であり,高所得の単親父の年間平均収入は914万円である。このように,単親父よりも単親母の平均収入額が低い傾向にあるのは,中低所得者であり,高所得者にはそのような傾向はない。他にも前述した通り,養育費の年間平均受取金額は単親母のほうが多いことが判明しており,収入の観点では,高所得のひとり親世帯では単親父の租税負担能力が相対的に高いということはできないというべきである。

  • 就業状況,仕事の安定性の差異

 次に就業状況についてであるが,被告が示した通り,平成28年の単親母全体の就業率は81.8%であるのに対し,単親父の就業率全体は85.4%である。年収700万円を境界にして平成29年の就業構造基本調査の結果を集計すると(甲3号証),高所得の単親母の就業率は89.6%で,単親父は100%であるが,平成19年では共に100%,平成24年では単親母が96.2%,単親父は97%であり,常に単親母の就業率が低いわけではなく,固定的な傾向は認められない。

 また正規の職員・従業員の割合であるが,ひとり親の収入階級別の割合を調査した統計はないので,平成29年就業構造基本調査の第41表(甲21号証)から,雇用者の雇用形態を所得500万円以上の男女の割合を算出すると,所得500万円以上の男性雇用者1146万4300人のうち,非正規やパート,アルバイトの男性は24万7200人で,率にすると2.19%であるのに対し,所得500万円以上の女性雇用者203万4700人のうち,非正規やパート,アルバイトの女性は6万4100人で,率にすると3.15%である。(注:就業構造基本調査 第41表における所得額は給与所得控除を控除する前の収入額であるが,非正規・パート・アルバイトのデータは500万円以上の細分化がされていないので500万円を基準に集計している。)

この結果,男女ともに所得が多いと非正規・パート・アルバイトといった雇用形態の者は非常に少なくなることが判明する。500万円を境界にしても2,3%であるので、700万円以上となれば男女ともにさらに割合は減少するとみられる。これは,ひとり親でも同様の傾向があると言えよう。とすると,この数値からは高所得の単親父,単親母共に雇用が不安定ということはできないので,就労の状況,仕事の安定性からみても,高所得の単親父の租税負担能力は,高所得の単親母に比べて相対的に高いということはできないというべきである。

 更に仕事の安定性について補足する。ひとり親に限った統計ではないが,2016年労働力調査の結果(甲22号証)からみると,収入が700万円以上の男性の平均在職期間は23.1年,女性の平均在職期間は22.5年となっており,両者に大きな差異はないのであって,在職期間の観点からみても,高所得者の仕事の安定性に性差はないといえる。

  • 住居所有状況の差異

 住居の所有状況について,まず被告は単親父の持ち家率が単親母よりも高いことを主張しているが,持ち家率と租税負担能力との関係を明らかにしていない。例えば,所得が同じ場合,持ち家があっても高額の住宅ローンをかかえる者,賃貸住宅であるがマイホーム資金を蓄えている者,親の持ち家で暮らす者,社宅など住宅費用が低負担で済む者など様々な事情が考えられ,一概に持ち家を所有している者の租税負担能力が高いとは言うことはできない。

そこでまず,住居などの保有資産の観点から検討する。一般的な夫婦は,妻よりも夫のほうの収入が多いので,離婚後の収入額が同じ水準であるならば,単親母の離婚前の世帯収入のほうが,単親父の離婚前の世帯収入よりも多いと考えられる。そうなると,離婚時の共有財産は単親母の離婚前世帯のほうが多いと考えられ,それを財産分与したならば,単親母のほうが所有する資産は多いといえよう。したがって,保有資産の観点からすれば,単親母のほうが同じ所得水準の単親父よりも相対的に高い租税負担能力があるというべきである。

次に,高所得ひとり親の住居保有事情について検討する。全国的なひとり親の所得水準別の統計はないが,葛西リサ氏が論文「父子世帯の居住実態に関する基礎的研究」で引用した広島市での状況(甲23号証)からすると,年収400万円以下では単親父の持ち家率が単親母よりも多いが,400万円から500万円の階級では,単親父の持ち家率が55.3%であるのに対し,単親母の持ち家率は60.5%と逆転している。つまり所得が高くなると,ひとり親の持ち家率の男女差の傾向は固定されないということになる。この点からも,高所得の単親父のほうが単親母よりも持ち家率が決定的に高いということができないのであり,もし住居保有が租税負担能力に関連するとしても,住居保有率の観点からは,高所得の単親父が高い租税負担能力があるといえないのである。

そもそも,行政側が個人の住居の所有状況を把握せず,性別でしかその傾向が判断することができないというならともかく,実際には個人の不動産所有状況を正確に把握しているのである。そして持ち家所有者の租税負担能力が高いとするならば,所有する不動産に対して課税するのが合理的であり,現実に固定資産税として所有する不動産に対する課税がなされているし,住宅ローンがあれば減税措置も取られている。とすれば既に所有する不動産に対する課税評価はなされているのであるから,寡婦寡夫)控除の要件設置理由として所有不動産を評価するのは,課税対象を二重に評価することであり不適切というべきである。

  • 小括

以上のとおり,被告は単親母全体と単親父全体を比較して,収入の額,就業の状況,仕事の安定性,住居の保有状況の面において単親父は単親母に比べて相対的に高い租税負担能力を有すると主張しているが,それらの差異の実態は中低所得ひとり親が持つ性差である。事実として,高所得の単親父は,高所得の単親母よりも収入額が同等もしくは少なく,受け取る養育費も少ない傾向にあるほか,就労の状況には性別による固定的な傾向は認められず,仕事の安定性も同等であり,住居の保有状況も性別による固定的な傾向は認められない。つまり,高所得者に限ると単親父は単親母に比べて相対的に高い租税負担能力を有しているとはいえないというべきである。

 

3 憲法14条1項の違憲性判断の枠組みと本件区別

 憲法14条1項は,課税権の行使を含む国のすべての統治行動に及ぶものであるが,同規定は国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく,合理的な理由なくして差別することを禁止する趣旨であり,国民各自の事実上の差異に相応せず不合理に法的取扱いを区別することを禁止するものである。

そして,昭和60年大法廷判決では,「租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は,その立法目的が正当なものであり,かつ,当該立法において具体的に採用された区別の態様が上記目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,その合理性を否定することができず,これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできないものと解するのが相当である」としている。

本件は,性別による区別であり,所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別ではないが,同じ違憲審査基準が採用されるという前提で,まずは,立法目的の正当性と,立法手段の合理的関連性を検証する。

 

4 被告の主張する立法目的の正当性

 被告は,単親父には単親母にはない所得要件を設置した設置理由として,DHCコンメンタール所得税法189頁(乙6号証)の解説を引用し,以下のように主張している。

「上記㋑の要件(寡夫控除の所得要件)が設けられたのは,寡夫の場合は寡婦と異なり,通常は既に職業を有しており,妻が死亡したり離婚した場合でも,引き続き事業を継続し,勤務することが普通であり,高額の収入を得ている者も多いと考えられたことによるものである。」(被告準備書面(1)29頁)

所得税法が,寡夫につき,寡婦にはない所得要件を設け,合計所得金額が500万円を超える場合には寡夫に該当せず,所得控除を認めないこととしたのは,父子世帯の父親の場合は,寡婦(母子世帯の母親)とは異なり,通常は父子世帯となる前に既に職業を有しており,父子世帯となった後も引き続き事業を継続したり,勤務を継続したりするのが普通と認められ,また,高額の収入を得ている者も多いなど,男性と女性の間に存在する租税負担能力の違いや生活関係の差異等を考慮したものと解されるから,寡夫につき,寡婦にはない所得要件を設けた立法目的は正当なものである。」(被告準備書面(1)30頁)

 租税負担能力の違いや生活関係の差異を考慮するということは,相対的に,租税負担能力が低い者や生活関係上の負担が大きい者の租税負担が軽くなるように調節するということであり,これが立法目的であるならば,垂直的公平負担の原則に沿ったものであるといえるので,その正当性は否定できない。

 

5 立法目的と立法手段の間に合理的関連性がないこと

では,本件で採用された立法手段は,立法目的を達成する手段となっているかを検証する。先に述べたように,租税負担能力等の差異は,中低所得のひとり親では単親父のほうが単親母より高く,高所得のひとり親では単親父と単親母は同等であるのが実態である。となると中低所得の単親母の税負担が,中低所得の単親父の税負担より軽くなるよう調節する手段が目的を達成する手段であって,関連性のある手段となる。しかし,寡夫にのみ所得要件を設けるという手段では,中低所得の単親母と単親父の租税負担を調節することにはならず,目的を達成することができない。その上,租税負担能力や生活関係に特段の性差がない高所得の単親父を,性別の違いだけで租税負担を重くする理不尽なものであり,不合理な手段である。

 ではいったい,なぜ立法目的と立法手段との間に合理的関連性がないのか。その理由は,「6 所得要件の設置理由の分析」で述べる通り,本来の立法目的が,別の理由で差し替えられているからである。

 

6 所得要件の設置理由の分析

 寡夫控除の設置経緯,所得要件の設置理由については,昭和56年3月30日の参議院大蔵委員会で,次のような会議録が残されているので,抜粋して引用する。(甲24号証)

○多田省吾君 次に,所得税改正に絡みまして寡夫控除問題及び父子家庭問題で若干質問したいと思います。

 今回の所得税法の改正で寡夫控除がなされますが,このことは評価しますけれども,五十六年度でどのくらいの予算額になるのか。また当初厚生省は所得制限なしで要求しておりましたが,大蔵省は収入ベース四百三十万円,実質収入ベースで三百万円と所得制限を行ったのは何ゆえか。また女性の寡婦控除は所得制限がないのに,男性の方の寡夫控除にこのように所得制限ありという差別待遇した理由は何なのか,その辺をお伺いします。

 

○政府委員(梅澤節男君) 今回の所得税法の改正で寡夫,いわゆる男のやもめに対する控除を新設することをお願いしているわけでございますが,これは従来から国会でも御議論がございまして,こういう制度を設けるべきではないかという御議論がございまして,私どもも政府の税制調査会などでも御議論をいただきまして,父子家庭のための措置として税制上この控除を新設することにいたしたわけでございます。

 ただ,お尋ねの件でございますけれども,男性の場合は女性の寡婦の場合と違いまして,たとえば奥さんが亡くなったり,あるいは奥さんと離婚をした,その後すぐ何と申しますか,大体男の方はそのまま働いておられますし,あるいは事業を継続しておられるということで,直ちに女性の寡婦の場合と違いまして,つまり女性の寡婦の場合はだんなさんが亡くなられますと,翌日からいわば家庭を支える柱がなくなるというふうな事態になりますけれども,男性の場合はそういうことではなかろうということでございまして,やはり同じ「寡ふ」という場合でも男性と女性との間におのずから区別があってはしかるべきではないかということで,今回の男性の寡夫控除の場合は。女性の場合と違いまして係累のない場合は対象にならない。係累と申しましても特に子供さんがあって,しかもその子供さんが基礎控除額以下の収入しかない場合に限るということでございます。そういう考え方に立っておりますのであらゆる男性の寡夫についてこの控除を認めるということではなくて,やはりある種の社会保障的な観点から見ますと,所得制限があってしかるべきであろうということで,現在女性で係累のない場合に所得額三百万円,これは給与収入ベースにいたしますと四百三十万円になるわけでございますが,それとのバランスをとりまして,所得金額三百万円以下の方に限定するという考え方をとっておるわけでございます。

 まず,寡夫控除の創設は,寡婦に認められている措置を必要な範囲内で男性にも及ぼすといういわば税法の整備の観点から行われたものである。

 そして,上記答弁によると,扶養親族のいない死別寡夫や,子以外を扶養する離死別寡夫寡夫控除の対象から除外し,単親父のみが必要な範囲内であるとした理由は,寡夫の場合は,寡婦と異なり,通常は既に職業を有しており,妻と死別や離別した場合でも,引き続き事業を継続し,勤務することが普通であると考えられたからである。

 更にそこから,対象を一部の単親父に制限した理由は,全ての寡夫の中から対象を単親父に制限したように,「男性と女性の間には区別があってしかるべき」で男性と女性を区別(男性を冷遇)し,適用の範囲を一部に制限するという考え方に立ったからである。

 そして,適用の範囲を,単親父の中から一部に制限する方法として所得要件を採用した理由は,ある種の社会保障的な観点からであり,所得要件のある死別独身寡婦とバランスをとったからである。

 以上のことから,実は被告が,寡夫控除の対象から独身死別寡夫や子以外を扶養する離死別寡夫を排除して単親父に制限したときの理由を,所得要件設置の立法目的に差し替えていることが判明する。

 となると所得要件設置の本来の立法目的は何であろうか。それは,第1に,所得要件に類する「所得制限」には,一般的に政策実施の際の財政支出を抑制する狙いもあること。第2に,当初厚生省が,単親父への控除は,所得水準にかかわらず必要であるとし,所得要件なしで単親父に父子世帯控除を要求していたが,大蔵省が財政事情の厳しさを背景に(甲2号証)所得要件を追加したこと。第3に,実際に所得要件の設置によって,高所得単親父1人当たり(累進課税税率を20%として)約55,000円の税収減の抑止効果があること。以上から,本来の立法目的は,「新設する減税制度の対象から,所得の多い単親父を排除することで,税収減を軽減するため」と解される。帰するところ,この立法目的でなければ,立法手段が釣り合わない。

 

7 本来の立法目的に正当性がないこと

 では,本来の立法目的に,正当性があるかを検討する。

 租税法の主たる目的は財源の確保であるが,税負担の公平性も当然の要求であり,両者は排他的なものではなく,両立されるべきものである。そして,公平負担原則のひとつが水平的公平負担であり,同一の租税負担能力を持つものは同一の額の租税を負担するべきであるというものである。そうすると,世帯構成や性別,所得水準等といった分類によりマイノリティである納税者を,事実上の差異に相応せず,納税者本人とは無関係な事情で,不合理に重い負担を課し不利益を与える場合,例えそれが財源確保を目的としたものでも,負担の程度に関わらず,水平的公平負担の原則を無視した不当なものというべきである。

 本件区別の理由を,単親母と単親父の租税負担能力等の差異としても,これらの差異は全ての所得水準で存在するものではなく,高所得のひとり親には存在しないのだから,区別される高所得の単親父には,無関係な理由であり,区別に正当性はないというべきである。

それでもなお,『父子世帯全体と母子世帯全体を総体でみたら差異がある』といった差別の常套句で正当化するのであれば,そこに論理性はなく,シングルマザーのほうが大変という先入観,女性は低収入で保護が必要だが男性は高収入で配慮は不要という固定観念や,男性は女性よりも多少の負担に耐えるべきといったジェンダーバイアス等によって形成されたものであることを否定できないというべきであり,なによりそれは,憲法14条1項が禁止する国民各自の事実上の差異に相応しない不合理な法的取扱いによる区別,そのものであるといえよう。

 ちなみに,DHCコンメンタール所得税法の解説で,寡夫控除を単親父に限った理由を,所得要件の設置理由として差し替えたのは,執筆者が,本来の立法目的では,正当性がないと考えたためではないか,と推察される。

 続いて「高額の収入を得ているものも多い」ことを理由に掲げていることにも反論する。被告は高所得者人数の多少と租税負担との関係を明らかにしていないが,納税者が,高所得者の人数が多いカテゴリーに属そうが,少ないカテゴリーに属そうが,所得額が同じであればカテゴリーの違いによる租税負担能力の差異はないというべきである。なお,平成29年の就業構造基本調査の集計結果(甲3号証)によれば,高所得の単親母は約11,500人でその平均収入は1147万円,一方高所得の単親父は約13,300人でその平均収入は914万円である。高所得のひとり親だけでみれば,人数に大差はないし,平均収入は単親父が高いといえず,より高所得を得ているものは単親母のほうが多いといえるのであるから,「高額の収入を得ているものも多い」という理由では,なんら単親父を排除する理由にはならないというべきである。

 

8 昭和60年大法廷判決の違憲審査基準より厳格にすべきであること

 昭和60年大法廷判決では,「租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は,~」として合理性の基準を採用している。しかし,「租税法の分野における全ての区別は」とせず,「所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は」としているので,伊藤正巳裁判官が以下の補足意見を示しているように審査基準が異なる区別の存在を否定できないというべきである。

法廷意見の説くように,租税法は,特に強い合憲性の推定を受け,基本的には,その定立について立法府の広範な裁量にゆだねられており,裁判所は,立法府の判断を尊重することになるのであるが,そこには例外的な場合のあることを看過してはならない。租税法の分野にあっても,例えば性別のような憲法一四条一項後段所定の事由に基づいて差別が行われるときには,合憲性の推定は排除され,裁判所は厳格な基準によってその差別が合理的であるかどうかを審査すべきであり,平等原則に反すると判断されることが少なくないと考えられる。性別のような事由による差別の禁止は,民主制の下での本質的な要求であり,租税法もまたそれを無視することを許されないのである。

原告はこれまで合理性の基準に基づいて違憲性を主張してきたが,そもそも性別を理由とした差別であり,憲法14条1項後段には性別によって経済的に差別されない旨を明定しているのだから,その趣旨に沿うには,より厳格な審査が必要というべきである。

仮に厳格な合理性の基準で審査するとなれば,租税負担能力等の特段の差異がない高所得のひとり親を性別で区別する必要性はないし,立法目的と立法手段の間には実質的関連性はおろか合理的関連性もないのだから,明らかに違憲というべきである。

現在,適用すべき審査基準には,いくつかの学説があるが,少なくとも性別の違いを理由とした区別が行われる場合,被告は,区別当事者間にある性別以外の差異を立証し,この区別がジェンダーバイアス等によらないものであることを論証しなければならないというべきである。そうすると被告は,区別当事者である高所得単親母と高所得単親父の租税負担能力等の差異を,正確な資料を基礎として立証しなければならないが,被告は区別当事者ではなく,全体的な比較をするのみで,なんら区別当事者間の差異を証明していない。もっとも,その両者の間には租税負担能力や生活関係で配慮が必要な差異は存在していないことは前述したとおりであるし,高所得単親父に限って特別な出費が発生しないということもないのであるから,区別の正当性も合理性も必要性もまったくないというべきであって,単親父の所得要件は著しく不合理で理不尽な差別であり,憲法14条1項に反するというべきである。

 

9 平成6年第三小法廷判決と本件区別

 平成6年第三小法廷判決は,夫と死別後,扶養親族がない女性(独身死別寡婦)には寡婦控除が認められるが,妻と死別後,扶養親族がない男性(独身死別寡夫)に寡夫控除が認められないことが,憲法14条1項に反するかについても争われた裁判の判決である。

判決では,「所得税法が,総所得金額が基礎控除の額に相当する金額以下の扶養親族等がいる場合にのみ寡夫控除を認めたのは,寡夫寡婦との間の租税負担能力の違いその他諸事情を考慮した結果と考えられる」とし,独身死別寡夫は,独身死別寡婦に比べて所得獲得能力が大きく生活関係の負担も小さいと考えられ,扶養する子のいない上告人の訴えを退けている。

独身死別寡夫は独身死別寡婦と異なり,通常は既に職業を有しており,妻が死亡しても,引き続き事業を継続し,勤務することが普通である点を考慮した立法目的は正当で,適用要件によって独身死別寡夫を排除した立法手段は関連性が認められる。すなわち,租税負担能力の高い死別独身男性と,租税負担能力の低い死別独身女性を区別したものであるので,区別には合理性があり憲法14条1項に違反しないと判断されたものである。

 それに対し本件は,租税負担能力等が同等である高所得単親母と高所得単親父の区別である。

事例は,区別当事者に租税負担能力等の差異があることを根拠に憲法14条1項に違反しないと判断し合憲としたのであるから,この判例をもって,区別当事者に差異のない本件区別も,憲法14条1項に違反しないということはできないし,逆に同じ判断基準を当てはめるとすれば,本件区別は憲法14条1項に違反するというべきである。

 

第3 結語

以上のとおり,寡夫控除に設置された所得要件は,憲法14条1項に反するので無効であり,違法な規定をもとに原告に行われた本件各処分はすみやかに取り消されるべきである。

 

以上

続、母子世帯にも所得制限

mainichi.jpんー

これで、もしかしたら中低所得の父子家庭も特別な寡夫として加算金がでることになるのかなぁ。

 

それにしても、

「(所得が)何千万円もあるひとり親に控除するのは、世の中が納得しない」と指摘

って、

そんな世論があったっけかなぁ。

何千万円って盛り過ぎじゃないの?

所得制限は500万ですよ~

 

その理屈だと、扶養控除も医療費控除も高所得者にあるのは、世の中が納得しないんですかねぇ。

 

もともと、寡婦寡夫は通常より特別な出費があることを考慮して設けられた制度なんだけどなぁ。

 

寡婦寡夫)控除がつかないと、共働きの方と同じ税額になりますけど、いいんですかねぇ。

 

所得制限の引き下げもあるそうで、所得500万円(年収688万8888円)から児童扶養手当受給者レベル(230万)まで落とされたら、不満がいっぱい出そうな気がしますし、所得を減らすための就業調整とか、養育費の隠蔽とか、誘発しそうな気がします。

 

議員さんには、しっかり議論していただきたいです。

 

 

それにしても突然でてきたこの話。まさか私の裁判がトリガーになってるってことはないですよね。

 

それから、これは推測ですが、甘利さんがこの制度の男女差を問題視するとは思えません。たぶん、財務省官僚が導いたものだと思います。

もし最高裁違憲判断されたら、その後に女性にも所得制限を付けることは不可能でしょうから、その前に付けることにした、ってのは勘ぐり過ぎですかね。

 

女性のひとり親にも所得制限?

ニュースにこんなことが書いてありました。

 

 

一方、寡婦控除の見直しも検討する。男性のひとり親である「寡夫」に対する年500万円以下という所得制限を女性のひとり親にも適用することや、所得制限の引き下げの議論を進める方針だ。

 

ついに動き出しましたね。

いきなり感はありますけど。

 

でも、所得の多い人への増税は、マスコミも反対しませんね。

 

こういう形でも男女平等が実現するなら、良いことかもしれません。国会でたくさん議論していただきたいと思います。

控訴審判決、ほぼ全文

控訴審の判決文は,地裁の判決文を補正する形なので、補正した最終形を読まないとよくわからなかったりします。

で、頑張って、地裁判決文と高裁の補正を当てた控訴審判決のほぼ全文を作成しました。(疲れた~)

 

これを読むと、いろいろなことが見えてきます。

 

 

判決

 

主文

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 川崎市長が平成28年5月13日付けでした控訴人の平成28年度の市民税及び県民税の特別徴収税額の決定のうち,〇〇万5600円を超える部分を取り消す。

 

第2 事案の概要

1 本件は,川崎市長(処分行政庁)から平成28年5月13日付けで,市民税及び県民税の特別徴収税額を〇〇万1600円とする旨の決定(本件決定)を受けた控訴人が,地方税法において,一定の要件を満たした女性の場合には所得制限なしに寡婦に該当するとされ,道府県民税及び市町村民税の所得割における課税所得金額の算定に際して26万円の所得控除(寡婦控除)を受けるためには,上記女性と同じ要件を満たすに加えて前年の合計所得金額が500万円以下でなければならないと定められていることに関して,このような男女の差を設けている地方税法の規定は,性別による差別を禁止する憲法14条1項に反し,控訴人について26万円の所得控除を認めることなくされた本件決定のうち,26万円の所得控除をした上で算定した税額を超える部分は違法となると主張して,行訴法3条2項に基づき,被控訴人に対し,本件決定のうち,26万円の所得控除をして算定した場合の税額である〇〇万5600円を超える部分の取消しを求めた事案である。

 原判決は,最高裁判所昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁(いわゆるサラリーマン税金訴訟大法廷判決。以下「前掲大法廷判決」ということがある。)を引用して,租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は,その立法目的が正当なもので,当該立法において具体的に採用された区別の態様が上記目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,その合理性を否定することができず,これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできないとした上で,寡夫につき,寡婦にはない所得要件を設けたのは男性と女性の間に存在する租税負担能力の違いや生活関係の差異等を考慮したものと解されるから,その立法目的は正当なものといえ,父子世帯と母子世帯との間では,収入の額,就労の状況,仕事の安定性の面において差異が存在し,父子世帯の方が相対的に高い租税負担能力を有しているといった母子世帯との差異を考慮して,寡夫控除につき,母子世帯にはない所得要件を設けることが,著しく不合理なものであるとはいえないとし,寡夫について,これを設けた地方税法の規定が憲法14条1項に反するものとはいえないとして,控訴人の請求を棄却した。

 控訴人は,これを不服として本件控訴を提起した。

 

2 関係法令の定め

(省略)

 

3 前提となる事実

(省略)

 

4 争点及びこれに関する当事者の主張

 本件の争点は,本件決定の適法性,具体的には,道府県民税及び市町村税の算定に際して26万円の所得控除の対象とされている寡夫について,同様の所得控除の対象とされている寡婦にはない所得要件を設けている地方税法の規定が,性別による差別を禁止している憲法14条1項に反するために,地方税法の当該規定を適用し,原告は寡夫に該当しないものとしてされた本件決定が違法であるといえるか否かであり,これに関する当事者の主張は次のとおりである。

(被告の主張)

(1)原告の平成27年分の給与収入は〇〇〇万〇〇〇〇円であり,これに給与所得控除をすると,合計所得金額は〇〇〇万〇〇〇〇円となる。

・・・・略・・・・

原告の合計所得金額は500万円を超えているから,原告は寡夫に該当せず,従って,原告に寡夫控除を適用することができない。

(2)原告は,寡夫寡婦について,男性(寡夫)にだけ所得要件があることが憲法14条1項に違反する旨主張するところ,憲法14条1項は,国民に対し,絶対的な平等を保障したものではなく,合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨であって,国民各自の事実上の差異に相応して法的取扱いを区別することは,その区別が合理性を有する限り,同条に違反するものではなく,租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は,その立法目的が正当なものであり,かつ,当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,その合理性を否定することができず,これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできない(最高裁昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27日大法廷判決民集39巻2号247頁)。

 地方税法寡夫について,寡婦にはない所得要件を設けたのは,男性の場合は,女性と異なり,通常は父子世帯となる以前に既に職業を有しており,父子世帯となった以後も引き続き事業や勤務を継続するのが普通と認められ,また,高額の収入を得ている者も多い等,両者の間に租税負担能力の違いが存在するので,これらの諸事情を考慮したものであるところ,実際に,概ね5年ごとに実施される全国母子世帯等調査の直近のデータ(平成23年11月1日のもの)によれば,就業率,正規雇用の割合,世帯収入の点で,父子世帯が母子世帯を上回っているから,母子世帯と父子世帯とでは,就労の状況,仕事の安定性,収入の額等に有意の差が存在するものといえる。

 加えて,租税法の立法においては,財政・経済・社会政策等の国政全般から総合的な政策判断を必要とするだけでなく,課税要件等を定めるについても極めて専門技術的な判断を必要とするのであって,様々な社会的要因を考慮する必要があるから,男性と女性の違いを考慮して,男性である寡夫につき,女性である寡婦にはない所得要件を設けたことには,合理的な理由があるというべきであって,このような取扱いが憲法14条1項に反しないことは明らかである。

(原告の主張)

(1)地方税法が,市民税及び県民税の算定において,26万円の所得控除の対象となる寡婦及び寡夫の定義に関し,寡夫にだけ年収500万円以下という所得要件を設けることで,所得が500万円を超える母子世帯の母親と所得が500万円を超える父子世帯の父親との取扱いを変えていることは,合理的な理由がなく性別のみの違いによって税負担を差別するものであり,憲法14条1項に違反するものである。したがって,寡夫の定義は,所得要件を除外して寡婦と同一とされるべきものであり,原告は寡夫として扱われるべきであるから,原告に対して,26万円の所得控除を適用せずにされた本件決定は,違憲,違法であり,上記所得控除を適用すると原告の平成28年度の市民税及び県民税の特別徴収税額は〇〇万5600円となるから,本件決定のうち同額を超える部分は取り消されるべきである。

(2)被告は,母子世帯と父子世帯とでは,就労の状況,仕事の安定性,収入の額等に有意の差が存在する旨主張するが,被告の指摘するデータはいずれも,母子世帯ないし父子世帯全体の性質を示したものにすぎず,所得が500万円を超える世帯について,父子世帯の父親と母子世帯の母親との間に就労の状況等に関する差が存在することの根拠となるものではない。

 実際,総務省統計局による平成24年就業構造基本調査の結果(甲12)によれば,パートやアルバイトの女性で年間所得が500万円以上である割合は,0.1%となっており,高所得の女性は大多数がパートやアルバイトではないのであるから,所得が500万円を超える女性と男性とで就労形態の安定性には差がないというべきである。

 また,近年では,ひとり親に対する経済的な支援制度において,母子世帯と父子世帯との取扱いの差が解消されており,母子世帯と父子世帯を同様に扱うことが社会通念となっているのは明らかである。

 地方税法における寡婦寡夫の区別は,租税法上の性別による差別であるから,厳格な基準によってその差別が合理的であるかどうかを審査すべきであって,やむにやまれぬ理由があり,必要不可欠なものでなければ憲法14条1項に反するものというべきところ,上記のとおり,所得が500万円を超える世帯において,男性と女性との間に就労状況等に関する差が存在するものとはいえず,被告が主張する男性と女性との違いは,いずれも具体性のないものであって,寡夫について寡婦にはない所得要件を設けることには何らの合理性もないのであるから,このような取扱いが憲法14条1項に違反することは明らかである。

(当審における控訴人の補充主張)

(1)租税法の分野においても憲法14条1項後段の性別による差別については,原判決の説示した合理性の基準では足りず,いわゆる厳格な基準によって審査すべきである。

(2)所得が500万円を超える一人親世帯の平均収入について,総務省の就業構造基本調査(甲15~19,22)における収入700万円以上(同調査では,税引前の収入金額を集計しているので,500万円の所得は,税引前の収入に換算するとほぼ700万円になる。)の母子世帯と父子世帯を比べると,平成19年,平成24年及び平成29年のいずれの調査でも同等又は母子世帯の方が高くなっているから(甲25),租税負担能力に差はなく,父子世帯のみに所得要件を設ける合理的な理由はない。

(3)寡夫控除制度の創設に当たり,寡婦控除と異なって子以外の扶養親族がいる場合には認めなかったことに照らすと,寡夫控除の立法目的には一人親世帯の子どもの福祉の観点も考慮されたと解される。母子世帯と父子世帯の子どもは同じ扱いにすべきであり,一人親の性別によって差別されて税負担が異なるという不利益を受けることは,子の福祉の観点からしても許されない。

(4)父子世帯の父親の寡夫控除にのみ同程度の所得を有する母子世帯の母親の寡婦控除にはない所得要件が課されていることが不合理な差別に当たり憲法14条1項に違反するとした場合,この不平等を是正する手段として,立法論としては,父子世帯の父親の所得要件を無効とする方法の他に,母子世帯の母親にも同様の所得要件を課して所得が500万円を超える者は対象外とする方法や,寡婦控除と寡夫控除の控除額をいずれも引き下げる方法など,複数の選択肢が考え得る。しかし,裁判上の救済手段としては,裁判の当事者以外の納税者に遡及的に負担を負わせ,課税関係に必要な法的安定を損なうような他の方法を採る余地はなく,父子世帯の父親の所得要件を無効とする以外の是正手段はないから,上記所得要件は当然に無効となる。

 

第3 当裁判所の判断

1 本件決定の適法性

(1)地方税法は,夫と死別し,若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち,扶養親族その他その者と生計を一にする親族で政令で定めるものを有するものを及び夫と死別した後婚姻をしていない者又は生死の明らかでない者で法令で定めるものを寡婦としており(以下,前者を「係累のある離死別寡婦」といい,後者の扶養親族その他政令所定の子を有しない寡婦を「係累のない死別寡婦」ということがある),係累のない死別寡婦の定義規定については一定の所得以下に対象者を制限する部分(以下,便宜上「所得要件」ということがある。)があるが,係累のない離死別寡婦については所得による制限を設けていない。他方,同法は,妻と死別し,若しくは妻と離婚した後婚姻をしていない者又は妻の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち,その者と生計を一にする親族で政令で定めるものを有するものについては,前年の合計所得金額が500万円以下である場合に限り,寡夫としており,寡夫については所得要件があるから,配偶者と死別し,若しくは配偶者と離婚した後婚姻をしていない者又は配偶者の生死が明らかでない者で政令で定めるもののうち,その者と生計を一にする親族で政令で定めるものを有するもので,前年の合計所得金額が500万円を超えるものについては,その者が女性である場合には,寡婦に該当し寡婦控除を受けることができるのに対し,その者が男性である場合には,寡夫に該当せず寡夫控除を受けることができないことになる。

 原告は,上記のように所得500万円を超えるひとり親について,性別により所得控除の適用が代わる地方税法の規定は,性別による差別を禁じた憲法14条1項に反するものであるから,原告については,寡夫として取り扱うべきであり,26万円の所得控除をしないでされた本件決定は違憲、違法である旨主張するから,この点につき,以下,検討する。

(2)憲法14条1項は,課税権の行使を含む国のすべての当地行動に及ぶものであるが,同規定は国民に対して絶対的な平等を保障したものではなく,合理的理由なくして差別をすることを禁止する趣旨であって,国民各自の事実上の差異に相応して法的取扱いを区別することは,その区別が合理性を有する限り,なんら同規定に違反するものではないというべきである。

 ところで,租税は,今日では,国及び地方公共団体の財政需要を充足するという本来の機能に加え,所得の再配分,資源の適正配分,景気の調整等の諸機能をも有しており,国民の租税負担を定めるについて,財政・経済・社会政策等の総合的な政策判断を必要とするばかりでなく,課税要件等を定めるについて,極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかであるから,租税法の定立については,国家財政,社会経済,国民所得,国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるというべきである。そうすると,租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は,その立法目的が正当なものであり,かつ,当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,その合理性を否定することができず,これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできないものと解するのが相当である。(最高裁昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27大法廷判決民集39巻2号247頁参照)。

(3)地方税法寡婦控除及び寡夫控除の制度は,所得税法の同様の制度に対応して設けられたものである。

 このうち,地方税法寡婦控除の制度は,当初,係累のある離死別寡婦を対象として創設されたが,昭和47年度の税制改正で,合計所得金額150万円以下の係累のない死別寡婦にも対象が拡大され,この合計所得金額は昭和50年度に300万円,平成3年度に500万円に緩和された。また,平成元年度の地方税法改正により,係累のある離死別寡婦のうち,扶養親族である子を有し,かつ,合計所得金額が300万円以下のものについては,寡婦控除の金額を30万円に増額する特別加算がされ,平成3年度に上記所得制限の緩和と軌を一にして特例加算の基準となる合計所得金額も500万円以下に拡大された。

 他方,地方税法寡夫控除の制度は,先に所得税法につき同種の制度が新設されたことに対応して,昭和57年度の税制改正で,妻と死別又は離別した後婚姻をしていない者で,政令所定の子を有し,かつ,前年の合計所得金額300万円以下のものを対象として設けられた。その後,平成3年度の地方税法改正で,上記合計所得金額は,係累のない死別寡婦と同様に500万円以下に緩和されて現在に至っている。

 以上のように,現行の地方税法寡婦控除と寡夫控除の制度は,控訴人が問題とする,①係累のある離死別寡婦について合計所得金額による制限が設けられていないという点に加え,②寡婦控除では,政令所定の子に限らず,元夫の両親などを含めた扶養親族を有する者であれば対象となるが,寡夫控除の対象は政令所定の子を有する者に限られる点,③寡婦控除では,政令所定の子や扶養親族を有していない死別寡婦であっても,前年の合計所得金額が500万円以下のものであれば対象となるが,寡夫控除では,政令所定の子を有しないものは所得のいかんを問わず対象外とされる点においても,相違がある。

 

(4)上記(3)の立法の経緯及び立法前後の議論等に照らすと,寡婦控除の制度は,もともと夫と死別又は離婚して再婚していない妻に扶養家族がある場合は,職業選択の制限があって就労しても特別の労力が必要となり,その際,特別の支出(追加的費用)も必要になると考えられるとして,昭和26年度の所得税法の改正によって所得税に関する制度として設けられ,これに対応して地方税法でも同様の制度として設けられたものである。その後,全体としても財政事情について考慮しつつ,社会的に必ずしも恵まれていない階層を対象とした減税の一環として所得税法寡婦控除の適用範囲の拡大を行うべきであるとする税制調査会の答申を受けて,昭和46年度に従前係累のある離死別寡婦について必要と考えられてきたのと同様の特別の支出(追加的費用)がどういう場合に生ずるかを判断基準とし,一般に夫と死別して再婚していない妻については,扶養親族がいない場合であっても,元夫の家族との関係が続くなど各種の負担を要すると考えられる反面,夫の遺産など所得が相当ある場合にまでこの負担を考慮する必要はないと考えられることから,一定の所得以下の係累のない死別寡婦にも寡婦控除の適用が拡大され,これに対応して昭和48年度の地方税法の改正でも同様の拡大がされた。そして,所得税につき,昭和56年度の税制調査会において,財源面での制約も考慮しつつ,税負担の調整のための必要最低限の配慮をするという観点から,父子世帯のための措置として,一定の要件の下に寡婦控除に準じた制度を創設することが適当であるとの答申がされ,これを受けて,同年度の所得税法改正で,必要な範囲で寡婦に認められている措置を父子世帯の父親にも及ぼすという観点から,妻と死別し,または離婚して再婚していない者のうち一定の所得以下のものについて寡夫と定義した上で,所得控除を認めることとして,所得税寡夫控除の制度が新設されたものである。この制度は,寡夫の場合は,係累のある離死別寡婦と異なり,通常は既に職業を有していて,妻と離婚又は死別した場合も引き続きその職業を継続するのが普通であって,妻との離死別により一般的に特別の支出が生じるとは考えられない上,もともと高額の収入を得ている者も多く,税制上の配慮としては,一律的に中低所得者に限るのが妥当であるとして,係累のない死別寡婦に対する寡婦控除に準じて新たに設けられた。これに対応して,昭和57年度の改正で地方税法道府県民税及び市町村民税についても同様の寡夫控除の制度が設けられたものである。

そうすると、寡夫につき,係累のある離死別寡婦にはない所得要件を設け,所得控除を認めないこととしたのは,父子世帯の父親の場合は,係累のある離死別寡婦のうち母子世帯の母親である者とは異なり,通常は父子世帯となる前に既に職業を有しており,父子世帯となった後も引き続き事業を継続していたり,勤務を継続したりするのが普通と認められ,また,高額の収入を得ている者も多い等,男性と女性の間に存在する租税負担能力の違いや生活関係の差異を考慮したものと解されるから,寡夫につき,係累のある離死別寡婦にはない所得要件を設けた立法目的は正当なものといえる。

 そして,証拠によれば①平成23年の父子世帯の平均世帯収入は455万円であり,母子世帯の平均世帯収入は291万円であること,②父子世帯の父親の就業率は91.3%であり,母子世帯の母親の就業率は80.6%であること,③父子世帯の就業している父親のうち,正規の職員従業員は67.2%,自営業者は15.6%,パート・アルバイト等が8%であり,母子世帯の就業している母親のうち,正規の職員・従業員は,39.4%,自営業者は2.6%,パート・アルバイト等が47.4%であることが認められるから,父子世帯と母子世帯との間では,収入の額,就労の状況,仕事の安定性の面において差異が存在し,父子世帯の父親は母子世帯の母親と比べて,相対的に高い租税負担能力を有しているものといえるのであって,このような父子世帯と母子世帯の差異等を考慮して,寡夫控除につき,寡婦控除にはない所得要件を設けることが著しく不合理なものであるとはいえない。

 そうすると,父子世帯の父親と母子世帯の母親との違いその他の事情を考慮し,寡夫について寡婦にはない所得要件を設けている地方税法の規定は,一定の合理性を有するものというべきであって,これが憲法14条1項に反するものとはいえない。

(5)ア

これに対して原告は,被告の主張する父子世帯と母子世帯の差異は,父子世帯全体と母子世帯全体との差異であって,所得が500万円を超える世帯においては,これとは異なる性質を示すはずであるから,所得が500万円を超える父子世帯の父親と所得が500万円を超える母子世帯の母親との間に就労の状況等に関する差が存在することの根拠となるものではなく,租税負担能力に差異はないとして,所得500万円を超える父子世帯の父親のみに所得制限を設ける地方税法の規定は憲法14条1項に違反する旨主張する。

 しかし,上記アの控訴人の主張は,次の2点において失当というべきである。

 第1に,控訴人の主張するように仮に所得500万円を超える母子世帯の母親と父子世帯の父親とを比較すると租税負担能力等に差がないとしても,このことは,政令所定の子を有する係累のある離死別寡婦に対する寡婦控除について所得による制限を設けないことを不合理とする理由にはなり得たとしても,直ちに控訴人の寡夫控除を適用しないことを不合理とすべき理由とはならない。上記の取り扱いの差異によって寡夫控除の適用が受けられない結果,控訴人が著しい負担を強いられているといった事情があればともかくとして,控訴人はそのような主張をしておらず,他方,現に控訴人が平成27年に〇〇〇万円以上の給与収入を得ていたことを考慮すると,寡夫控除を受けられないことによって著しい負担を強いられたとはにわかに認め難い(そもそも,仮にこのような負担が生じていたとしても,それは寡夫控除の適用対象を画する所得の上限額が現実に合致せず低すぎるということにすぎないところ,この上限額をどう定めるかは,まさに国家財政,社会経済,国民所得,国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的,技術的な判断にゆだねるほかない問題であり,裁判所は,その裁量的判断を尊重すべきものと考えられる。)。そうすると,控訴人の主張するところは,係累のある離死別寡婦に対し所得制限なしに寡婦控除を適用することが不合理で憲法14条1項に違反するということにとどまり,控訴人に寡夫控除を適用しないことが不合理であることをいうものとはいえないから,本件決定が違憲違法となるものではなく,控訴人の主張は失当といわざるを得ない。

 第2に,寡夫控除の制度が設けられた経緯についてみると,特別の支出(追加的費用)を要するのがどういう場合かという観点から,昭和47年度の地方税法の改正で寡婦控除の対象が一定の所得以下の係累のない死別寡婦にまで拡大され,次いで,昭和57年度に財政面での制約を考慮しつつ,必要な範囲で寡婦に認められている措置を中低所得層の父子世帯の父親にも及ぼすという観点から,妻と離婚又は死別した夫で政令所定の子を有し,かつ,一定の所得以下のものを対象として寡夫控除の制度が新設され,以後も寡夫控除と係累のない死別寡婦への寡婦控除の対象を画する上記所得の上限額が同額に設定されてきたものである。このような立法の経緯や前示の立法時の議論等に照らすと,寡夫控除の対象を中低所得層の父子世帯の父親に限るべきとする立法者の強い意志がうかがわれ,対象を一定の所得以下の者に限ることはその他の寡夫控除の要件と不可分一体となっていると見るのが相当である。そうすると,仮に対象を一定の所得以下に限る現行の寡夫控除の制度が不合理な差別に当たるとしても,それはむしろこの制度全体を再検討すべきことに結びつくものであって,控訴人が主張するように,寡夫の要件を定める地方税法の規定のうち,所得の上限を定める部分のみが当然に無効となって,それ以外の部分がそのまま有効として扱われるということはできず,当然に控訴人に寡夫控除が適用されることにはならない。この観点からも控訴人の主張は失当というべきである。

 原告は,近年では,ひとり親に対する経済的な支援制度において,父子世帯の父親と母子世帯の母親との取扱いの差が解消されており,母子世帯と父子世帯を同様に扱うことが社会通念となっている旨の主張もするが,現在においても,前説示のとおり父子世帯の父親と母子世帯の母親との間で平均収入額等の差異が存在することに照らせば寡夫について,係累のある寡婦にはない所得要件を設けている地方税法の規定が一定の合理性を有するとの上記判断を左右するものとはいえない。

(6)以上によれば,寡夫について,係累のある寡婦とは異なる所得要件を設けている地方税法の規定が憲法14条1項に違反するものとはいえない。そうすると,本件決定において,原告について,寡夫に該当しないものとして,26万円の所得控除をすることなく特別徴収税額を算定したことは適法であり,何ら違法な点はないというべきである。

 

当審における控訴人の補充主張に対する判断

(1)控訴人は,本件が性別による差別に当たるとして,租税法の分野でも性別のような憲法14条1項後段所定の事由に基づいて差別が行われるときは,厳格な基準によるべきであると主張する。

 上記の主張は,前掲大法廷判決における伊藤正巳裁判官の補足意見のこれに沿うかのような記載部分によったものと思われるが,この部分は完全な傍論にとどまるというべきである。そして,租税法上の取扱いが性別によって異なっているという一事をもって,租税法上の定立に関する総合的判断や専門的判断の必要性が変わるとは考えられず,立法府の裁量の尊重の必要性がなくなるとは考え難いから,控訴人の主張は採用することができない。ちなみに,最高裁判所平成7年(行ツ)第163号平成7年12月15日第二小法廷判決・税務訴訟資料214号765頁(乙47)は,政令所定の子がいない男性に寡夫控除を適用しないでされた所得税の更正処分が男女の性別による差別で憲法14条1項に違反する旨の上告理由に対し,前掲大法廷判決を引用して,所論の点に関する所得税法の規定及び更正処分は憲法14条1項に違反するものではないと説示して退けており,性別による取扱いの差異についても前掲大法廷判決と同様のいわゆる合理性の基準を適用すべきことを示したものと解される。

(2)控訴人は,所得が500万円(税引前約700万円)を超える母子世帯の母親の租税負担能力は,所得が500万円を超える父子世帯の父親と大差がないとした上で,前者が係累のある離死別寡婦に当たるとして所得控除を受けられるのに,後者が寡夫に当たらないとしてこれを受けられないことは,合理性のない性別による差別に当たり,憲法14条1項に違反するとして,地方税法寡夫の定義規定のうちの所得制限を定める部分のみが無効となり,その余の定義規定はそのまま残る結果,控訴人にも寡夫控除の規定が適用されると主張する。

 しかし,上記の主張がそもそも失当であることは,「第3 当裁判所の判断」の1(5)イで説示したとおりである。

 しかるところ,寡婦に認められている措置を必要な範囲で父子家庭の父親にも及ぼすという寡夫控除の目的からすれば,その適用を中低所得に限るという観点から所得による制限を設けるのは,前掲大法廷判決が給与所得に係る必要経費につき実額控除の代わりに概算控除の制度を設けた当時の所得税法の規定を合憲とするに当たって租税法の基本原則として説示する租税負担の公平な配分(租税公平主義)や租税の徴収を確実,的確かつ効率的に実現すること(徴税確保主義)にも合致し,これらの基本原則に沿うものである。

 また,先に説示したとおり父子世帯全体と母子世帯全体を総体として見れば収入額,就労状況,仕事の安定性等の面で差異があって租税負担能力や生活実態に差があることが認められ,このような差異を考慮して,寡夫控除の対象となる父子世帯の父親につき所得制限を設けることとしても,明らかに合理性に欠けるとはいえない。ちなみに,控訴人の提出する証拠(甲19、22)によっても,平成29年度における母子世帯の総数は62万3200世帯で,うち700万円以上の所得を有するのは1万1500世帯で,率にして1.85%程度にとどまるのに対し,父子世帯の総数6万4900世帯のうち,700万円以上の所得を有するのは1万3300世帯で,率にして約20.49%にも及ぶことになる。上記の母子世帯の1.85%という数字は,仮にこれらの世帯において十分な租税負担能力があって本来は寡婦控除を受けるような特別の支出がなかったとしても,租税の効率的徴収の観点から制度として是認し得る程度の範囲と思われる。控訴人の主張は,この1.85%の母子世帯と均衡を取るために,本来,十分な租税負担能力を有するはずの2割以上の父子世帯にも寡夫控除を適用すべきものとするものであって,不合理であることが明らかである。

(3)控訴人は,寡夫控除の立法目的には一人親世帯の子の福祉の観点も考慮されたと解されるとした上で,母子世帯と父子世帯の子は同じ扱いにすべきであり,一人親の性別によって差別されて税負担が異なるという不利益を受けることは子の福祉の観点からも許されないと主張する。

 しかし,寡夫控除が適用される結果,父子家庭の子が利益を受けることがあるとしても,それは間接的なものにとどまり,先に説示した立法経過等に照らしても寡夫控除自体は世帯主である父親の特別の負担を考慮した制度であることが明らかであって,上記の主張は前提を欠くというべきである。

(4)控訴人は,父子世帯の父親の寡夫控除に母子世帯の母親の寡婦控除にはない所得制限が定められていることが憲法14条1項に違反する場合,この不平等を是正する裁判上の救済手段としては父子世帯の父親の所得制限を定めた部分を無効とする以外の方法はない旨を主張する。

 しかし,先に説示したとおり,このことが憲法14条1項に違反するとはいえないし,寡夫控除の対象となる寡夫の要件を定める規定のうち,所得制限を定める部分だけが独立して無効となるともいえないから,控訴人の上記主張は採用することができない。

 

第4 結論

 以上によれば,控訴人の請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

 

東京高等裁判所第9民事部

裁判長裁判官 小川秀樹

   裁判官 瀬戸口壯夫

   裁判官 間 史恵