フレンチトースト訴訟

父ちゃん大法廷に立つ(計画)



意見書のたぐい

寡夫控除が差別であり、早期に法改正を求める意見書があちこちででてきています。

 

地方自治

福岡県議会 平成25年6月25日

埼玉県朝霞市市議会 平成23年6月27日

東京都三鷹市議会 平成23年12月20日

などなど、他にも多数。

この地方自治体からの意見書というのは地方自治法第99条の規定によるものなのですが、受け取った国側で何かしなければならないという規定はないです。関係委員会に参考資料として配られる程度です。効力が小さいですね。まぁ、国政が地方議会に振り回されるわけにもいきませんから理解はできるところです。

 

税理士会からも意見書がでています。

寡夫控除要件には合理的理由はないと記載されている意見書もあります。

 

弁護士会日弁連)からは見つけられなかったです。非婚の母に対する寡婦控除適用を求めるものはあります。これは日弁連人権救済申立てがあったからだと思います。弱者救済となると日弁連は頑張りますね。

寡婦(寡夫)控除関連と当訴訟年表

時系列がわかるように年表をつくってみました。随時更新していきます。

(令和4年2月2日 更新)

 

所得税に対する当訴訟など】

平成28年3月11日 横浜地方裁判所に提訴 平成28年(行ウ)第15号

平成28年5月18日 一審第1回口頭弁論

平成28年7月20日 一審第2回口頭弁論 結審

平成28年10月12日 却下判決

 

仕切り直し

平成29年12月28日 税務署に更正の請求

平成30年1月18日 税務署から修正の予知

平成30年3月27日   税務署から更正処分と過少申告加算税賦課決定処分

平成30年4月25日 更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分

平成30年5月24日   国税不服審判所に審査請求

平成30年9月25日 国税不服審判所、審理手続きの終結

平成30年11月16日 棄却裁決

令和元年5月8日 東京地方裁判所に提訴 令和元年(行ウ)第236号

令和元年7月4日 一審第1回口頭弁論

令和元年9月26日 一審第2回口頭弁論

令和元年12月5日 一審第3回口頭弁論

令和2年2月27日 一審第4回口頭弁論

令和2年8月6日 一審第5回口頭弁論

令和3年1月14日 一審第6回口頭弁論 結審 

令和3年5月27日 一審判決 敗訴(棄却)

令和3年6月14日 控訴 令和3年(行コ)第166号

令和3年8月3日 控訴理由書提出

令和3年10月27日 控訴審第1回口頭弁論(結審)

令和4年1月12日 控訴審判決 棄却

上告しないため、確定。

 

 

【住民税に対する当訴訟など】

平成28年5月13日 市県民税決定通知処分

平成28年6月28日 川崎市に審査請求

平成29年3月30日 棄却裁決

平成29年9月29日 横浜地方裁判所に提訴 平成29年(行ウ)第51号

平成29年12月4日 一審第1回口頭弁論 

平成30年2月5日 一審第2回口頭弁論

平成30年3月19日 一審第3回口頭弁論 結審

平成30年7月11日 一審判決 敗訴(棄却)

平成30年7月19日 控訴 平成30年(行コ)第250号

平成30年10月3日 控訴審第1回口頭弁論

平成30年11月21日 控訴審第2回口頭弁論

平成31年2月13日   控訴審第3回口頭弁論

令和元年5月8日 控訴審第4回口頭弁論

令和元年7月17日 控訴審第5回口頭弁論 結審

令和元年10月9日 控訴審判決 敗訴(棄却)

令和元年10月21日 上告 令和元年(行サ)第130号 → 令和2年(行ツ)第56号

令和元年12月13日 上告理由書提出

令和2年2月17日 最高裁に記録到着

令和2年10月12日  第一小法廷判決 敗訴(棄却)

 

寡夫控除関連年表】 last update 2018/5/24

昭和26年 寡婦控除(税額控除)が創設

昭和42年 寡婦控除が所得控除に改正

昭和47年 寡婦控除拡張(扶養なしでも適用)

昭和52年 只松委員が大蔵委員会で寡夫控除の創設を要求

昭和56年 寡夫控除が創設

昭和60年 男女雇用機会均等法が制定

平成元年 特定寡婦控除が創設

平成6年 寡夫控除要件に合憲判決

平成9年 岡山市で非婚ひとり親家庭のみなし寡婦(夫)適用を開始(以降他の自治体に広がる)

平成12年 政府税調中期答申で寡夫控除の性差異を言及

平成17年 論叢「所得控除の今日的意義 」で寡婦控除寡夫控除について言及(国税庁のHPに掲載)

平成22年 児童扶養手当が父子家庭に適用

平成23年~各自治体から寡婦(夫)控除制度の法律改正の早期実現を求める意見書が決議

平成26年 遺族基礎年金が父子家庭に適用

平成26年 母子寡婦福祉資金貸付制度が父子家庭に適用

平成30年 みなし寡婦制度が全国展開

平成31年 所得制限が実質引下げ(収入689万円→678万円) こっそり増税

令和2年 婚姻歴のないひとり親にも控除適用

同    父子世帯の控除額が特別寡婦と同額へ

同    母子世帯にも所得制限が適用

(ひとり親の男女差はなくなりました。でもまだ死別独身者や子以外の扶養の男女差は残っています。)

被告の立場になってみる

どこのお役人さんがいらっしゃるのかわかりませんが、もう訴状は受け取っているはずですし、答弁書を書いたり、口頭弁論の準備をしていると思います。勿論、私の訴えを棄却してもらうつもりでしょう。

彼らは、寡夫控除要件の差別が合理的であることを示さなければなりません。これは大変だと思います。

判例から持ってくるとするなら、男女によって租税負担能力が違うから、ということになりますが、例えば同じ年収1000万円の母子家庭と父子家庭で租税負担能力が違う理由なんてありませんから、持ち出しにくいと思います。(これを持ち出してきたら論破できるような気がします。)

昔なら、女性は独身で子無しという求人条件があり、男性社員の花嫁候補を募集するなどということがありましたが、今は男女雇用機会均等法で禁止されていますから、理由になりません。

政府税調で必要性を指摘されながら、改正してこなかった理由ならば簡単に想像できます。

 

男女平等を目的にして法改正するとしたら2パターン考えられます。

ひとつは寡婦控除要件を寡夫控除に合わせることです。これは平成17年の論叢「所得控除の今日的意義 」で言及されています。しかしこれが実現されれば母子家庭の負担が重くなります。女性の権利保護を主張するような団体から確実に反対されるでしょう。そうなると選挙に影響しかねません。

もうひとつは寡夫控除要件を寡婦控除に合わせることです。しかしこれをやると何億円も税収が減ります。その分の財源が必要となり、積極的に法改正しようとはなりません。もちろんこれは合理的な差別理由にはなりません。

 

税収が減るような改正をするには、違憲判決のような強い外圧が必要です。

もしかしたら政府はこういう訴訟が起きるのを待っている!

 

なんて事はないですね、きっと。

憲法14条1項適合性の判断基準について

今回の訴訟では、所得税法寡夫要件が、憲法14条1項について合憲か違憲か争うことになります。

その判断基準としては最高裁が次のように言っていて、これが標準的な解釈となっています。

憲法14条1項は,法の下の平等を定めており,この規定が,事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきことは,当裁判所の判例とするところである」

つまり、差別するなら合理的な理由が必要、となります。

以前取り上げた福岡の判例では、この判断基準に従っていないことがわかります。なぜでしょう?

裁判になったいきさつや、被告となったのは税務署員ということ、他にも給与控除についても争っていることから、私は次のように考えています。

 

まず原告は自営業です。原告は確定申告の際に、自営業には認められていない給与控除を自分で適用しています。更に要件を満たしていない寡夫控除もつけて納税額を低くしました。当然税務署は修正するように指導しますが、従いません。払っていない税金については督促しています。そこで原告は裁判を起こしています。

裁判所は憲法14条1項適合性の判断基準に照らし合わせた判断をしていません。差別があることも認めていますし、著しく不合理とはいえないと言っているのですから、程度は小さいが不合理な差別があることを認めているといってもいいと思います。しかし、行政の裁量の範疇であると、一蹴しています。

結局、税の徴収トラブル対応として、税務署員の円滑な職務遂行を後押しする。そういう側面をもった判決だったのではないでしょうか?だから厳格に14条1項の判断基準に沿わなかったのだと、私は考えています。

 

今回の裁判では、純粋に憲法14条1項の適合性を追及します。所得税法寡夫要件差別に合理的な理由があるかないか、それが今回の争点です。

裁判官の覚悟

戦後に最高裁違憲判決がでたのは10例しかありません。違憲判決を出す瞬間は、歴史が変わる時。判事にとってはクーデターをおこすようなものなのかもしれません。

一審は地裁ですが、地裁の裁判官にとって、もし違憲判決を出すことになったとしたら、これは一生に一度の覚悟がいることなのだそうです。

裁判官にも出世欲はあるでしょう。表向きは違うでしょうが、上位の方針に忠実で、突飛な判決を出さない。国に対して忠誠であるほうが、出世は望めるでしょう。

となると、こちらは裁判官に覚悟してもらうだけの材料、論拠を示さなければなりません。

しかしこちらは弁護士でもなく、素人。ならば素人らしく、シンプルに、ストレートに参りましょう。

大蔵委員会議録(3)

(つづき)

大倉政府委員
 お話が私どもの担当者の方にございましてから急遽調べましたでございますが、現在わかっております限りでは、イギリス、西ドイツ、フランスともに寡婦控除があり、それは同様に男やもめにも適用になるという仕組みのようでございます。アメリカには寡婦控除自身がない、扶養親族世話費控除という形で処理されている。日本のような寡婦控除という形はないということのようでございます。

只松委員
 各国によって税の制度がいろいろ違いますし、取るものは取って、支払うものは支払ったりいろいろやっております。しかしいま幾つか述べられましたように男やもめ、寡夫に対する控除的なものは大体あるのですよ、ないのは日本だけなんですよ。しかも国会で議論されなかったのはわが国だけなんですよ。これは初めて国会で論議しておるわけです。またこういう社会情勢下において男やもめ、いわゆる寡夫の控除とするか手当とするかいろいろありますけれども、日本の現行税制のもとにおいては寡婦控除に対応する寡夫控除というものが大体ふさわしいのじゃないかと思うのです。今年の税法からというのは多少無理があるかもしれませんが、是非ひとつ来年の制度から取り入れてもらいたい、こういうふうに思いますが、どうですか。

大倉政府委員
 御指摘を受けましてから私どもなりにいろいろ勉強を続けております。決して申しわけをいろいろ申し上げるつもりはございませんけれども、従来から日本に女の方に寡婦控除があって男の方にはそういう議論がなかったという背景はそれなりに大臣が申し上げたような背景があったのかもしれませんし、またある時期に扶養控除額が基礎控除額や配偶者控除額よりも低かったときに配偶者のいない一人目の扶養控除というふうなことである程度おこたえをしてきた、それがいまや昭和49年度改正以来扶養控除額がそろってしまったのでそっちでのおこたえもなくなったという現状を踏まえてみますと、新しい角度からいまの御提起は私どもなりにひとつ前向きに考えてみたい、税制調査会にもお諮りいたしたいと思いますし、次回所得税法の改正の機会がありますまでになんらかのお答えをだしまして御審議を仰ぎたい、そのように考えます。

只松委員
 事務当局からただいまのようなお答えがありましたので、ひとつ大臣の方におきましてもぜひ一層の御努力をしてもらうようにお願いして、この項は終わりたいと思います。

国務大臣
 前向きに考えていきたいと思います。

 

(引用終わり)

大蔵委員会議録(2)

(つづき)

国務大臣
 大変むずかしい問題です。未亡人に対して寡婦控除があって、男やもめに対しては控除がない、これはおかしいじゃないか、こういうご意見ですね。それは私は非常に不公平に扱うということでなしに、世の中で労働をやって生活をしていくことについては、先ほど最初に私が申し上げたとおり、女性よりも男性の方が頭は別にどうと言うておりませんが、体力が非常に労働に強いというようなことから考えますとご主人を失った女性に対しましては、やはり女性も食べていかなければなりませんが、働かねばならないというような場合に、未亡人なるがゆえにこの控除をする必要が、あるいは男やもめよりは必要性が多いんじゃないかというようなことが考えられて、そして現行の制度が行われておるのじゃないか、これは単なる私の考えに過ぎませんけれども、ここらのところにつきましては専門家からお答えをさせていただきたいと思います。

只松委員
 それも大変御認識の違いといいますか誤りでありまして、たまたま私はこの問題を、私の友人が病院に入っておりましたので見舞いに行きましてこういう話はしたのですが、それには実はちょうどいい手紙が来ている。これを見たらどうだというのです。これはある新聞社の方が私のところの県議会員にあてた手紙です。これはプライバシーに関わりますから必要な面だけを読みます。「○○君の抱えている最大の問題点は、現在妻君は別居しており」中略「炊事、洗たく、掃除はお手伝いを雇って近所のおばあちゃんがやっていますが、子供たちにとって母親が別居しているという事実は穏やかではありません。」ここにありますように、くつ下と女性は強いと言われて、女性の別居なり蒸発というのは非常に多い。後に数字その他列挙いたしますけれども、そういう事態を考えると、女性も職場で働くようになった。これは当然のことです。そうしてまいりますと、別居というのは、これは新聞や週刊誌によりますと、大蔵官僚は余りにも徹夜が多くて、大蔵官僚の中には離婚が多い、こういうことも盛んに書かれておりますね。こういうことを考えましても、法のもとに男女平等であるならば、こういう社会の実態に即応する法というものを改めていく、あるいは前進させていくということは当然だと思うのです。
 そこで寡婦あるいは寡夫がどのくらいあるかといいますと、詳細に各年齢別にいくと大変時間がかかりますが、男性で59歳までで19万9300人が死別、離別で31万3200人、64歳まででとりますと死別が30万6500人、離別で34万1900人、総計いたしまして男子の死別106万9300人、それから離別が38万4400人、これだけあるわけであります。これは昭和50年度の国勢調査からの推計です。相当膨大なものです。女性の場合はもっと多くて、死別が552万6700人、離別が91万2800人、これだけあるわけです。その中で寡婦控除対象者とうのはぐっと低くなってくるわけですが、とにかく男子の方が再婚する率が多いといいますか、いろいろなことで少なくはなってきております。しかしなおかつやはり150万近い死別、離別者、男やもめというのがある。そしてさっき私がほんの一例を読み上げましたように、家庭内に女の人がいなくなると、お手伝いさんを雇ったりなにしたり大変な目に遭うし、大変な費用がかかっておるということは、私が言わぬでもご想像だけでもおわかりだと思う。そういうことになれば物事が平等ならば、男にも寡婦控除というものが適用される。これは当然だと思うわけでございます。そういう実態の中で寡婦控除が一体どのくらい適用されておるか、ひとつ当局からご説明をいただきたい。

大倉政府委員
 これは昭和52年度予算ベースでございますが、現行法によります寡婦控除の控除対象人員は38万人というように推計いたしております。

只松委員
 38万人で、寡婦控除の金額、階層別も私は大体いただいておりますが、およそ金額は幾らになりますか。

大倉政府委員
 38万人を基礎にいたしまして一人当たり控除額を掛け合わせまして、さらに上積み税率を推定いたしますと、減収額としては120億円程度ではないかという推計をいたしております。

只松委員
 約640万人からの中で寡婦控除適用者が38万人、そして金額にして120億円。男性の場合は全体で140万人前後でございます。ただ男性の場合は働いている人が多いだろうと思いますので、女性の場合はこれは寡婦控除適用者が17.9%、これに相当するわけです。男性は大体どのくらいあるとお考えになりますか。

大倉政府委員
 実は先ほど来御指摘の御数字は国勢調査の方から正確におとりいただいた数字だと承知いたしましたが、この方々が一体課税最低限の上下にどう分布しているだろうかということは申し訳有りませんがちょっといままで調べたことはございませんので、少し時間をいただきましてある程度のサンプル調査でもいたしてみたいと思います。女の方の場合よりは課税最低限の上におられる方の比率がかなり多いであろうということは申せるように思いますが、どの程度かというのはちょっと時間をいただきまして何らかの方法で調べてみたいと思います。

只松委員
 これも国勢調査の死別者、離別者の人口配分から見まして私は適用者が大体30%前後ではないかと思います。女性で17.9%、20%足らずですから倍までいっても30%前後だと思います。私はこれをたまたま試算してみてくれないかということであなたたちの方に試算をしてもらったのです。これは50%で試算された。50%で試算してきた場合に33万人ぐらいになるわけですね。一人当たり23万円、その場合減収額が110億円、こういう形になる。私はしかし50%ない、大体30%前後だと思う。ぐっと下がってきますよ。したがって金額にしても私はそれほどのことではないと思うのです。いま一銭でも欲しい大蔵当局としてはこういう減収になるものを現段階であえてするということはなかなか容易ではないだろうと思いますけれども、私は税の一般論でも多少やりますがこういうふうに明確に、これはたまたま男性・・・先ほど男が少し強くないかと大臣おっしゃったけれども、強いと思われている面の男性に対する不公平であるからこれだけ明確にあってもいまみたいな答弁に終始される。これが弱くは決してないと思いますが、弱いと言われている女性の場合にこれだけ明確な不公平な税制があれば大きな社会問題になってくる。しかし決して私はいま男性は必ずしも強くなくて、さっき読み上げましたように離別されたりあるいは別居されたり蒸発されたりしておる家庭の男性というのは非常に困っている。当然に私は寡婦控除を適用すべきだ、こういうふうに思います。
 その前に世界で大体寡婦控除を適用していない国があるかどうか、どうです大臣。これはよっぽど特殊の国を除いて全部しておるのですから、ありますか、どうです。

 

(つづきます)